「申し訳ございません。令嬢のファッションについて勉強をします」
私は着飾ることに全く興味がないから、その分野の需要がキャッチできない。
もっと研究しないと、この事業は失敗するだろう。
「踊り子や娼婦のような髪型をつくりなさい。手入れしないで簡単に装着できるものよ。浮気や不倫をするときに便利だから」
私は姉の言葉にショックを受けた。
姉に言われたから嫌だったけれど、サイラスと会って鉱山を譲り受けたのに。
「私は、浮気をしたつもりはありません⋯⋯」
姉に反論をすることは許されないけれど、どうしてもそれだけは伝えたかった。
「抜け目のない、切れ者のあなたはどうしたのミリア・アーデン。今のあなたを見たら、父はあなたを後継者にするのをやめたことを人生最大のファインプレーだと思うわよ!」
彼女がサイラスの真似をしてきたので、驚いてしまった。
「お姉様、あの場にいたのですか?」
皇后である彼女がいたら大騒ぎになるような場所で彼女がいるとは思えないが、私たちの会話の内容を知っているのはなぜだろう。
「いるわけないって分かるわよね、ミリア。茶髪に、赤い瞳というどこにでもいる自分は会ったことない人にはアーデン侯爵の婚約者だと認識できないと思っているでしょ。でもね、みんな婚約者の名前はミリアで茶髪に赤い瞳をしていると知っているの。だから、あなたがミリアと呼ばれていたら当然注目される」
母がつけたという私のミリアという名前は、帝国で誰もが知るだろう童話の地獄の業火で焼かれて破滅する魔女の名だ。
だから、ミリアという名前を子供につける人間はまずない。
この名前は母が私を恨んでいるようメッセージのような名だ。
「彼にはカルマン公女と呼ばせます。私が浅はかでした。申し訳ございません」
4年も名前で呼び会っていて、今更バーグ子爵令息と彼を呼ばなければならない。
彼はいつも私を助けてくれて、今回も親切に驚くほど少額で鉱山を譲ってくれた。
実際、あれからすぐに鉱山を採掘するとエメラルドが出た。
これにより、彼は鉱山を安価で売った愚かな領主と言われてしまうだろう。



