「ミリア、まずは、そこにいる元彼サイラスをエキストラにしなさい。あなたは主な登場人物だけしか意識していない。あと、自分が周りの人間の主な登場人物に今なっていることを自覚しなさい。みんなの憧れの王子様を射止めたあなたは今とても見られているのよ」
前回会った時に姉は私に周りに見られていることを常に意識するように言ってくれていた。
それにもかかわらず、私はいつもの調子でいつものようにサイラスと会ってしまった。
「ウィッグの話はどうしたの? 会う必要がどうしてもあるというのなら、ちゃんとウィッグで変装して行けばよかったのよ」
私はウィッグ事業には着手していたが、自分がそのウィッグで変装することは考えていなかった。
「私が、変装ですか?私は貴族がオシャレに髪色や髪型を変えたウイッグをして出かけたり、アーデン侯爵をウィッグで地味にしたりするのに使えると思ったのですが⋯⋯」
茶髪に赤い瞳という、どこにでもいるルックスの私が変装をする必要など全くない。
「アーデン侯爵が地味な髪色になったところで、別の魅力を発見したと令嬢たちはますます彼に注目するだけよ」
姉が言った言葉を聞いて確かにその通りだと思った。
私はレナード様の金髪が本当にキラキラしていて素敵で発光しているように見えていたから、それを消そうとばかり思っていた。
黒髪でも、茶髪でもレナード様の別の魅力を引き出してしまうだけだ。



