そんな価値のある鉱山を彼は売ってくれるだろうか。

「エ、エメラルド? エメラルド? そんなものでないよ。管理費ばかりかかっているから貰ってくれたらありがたいくらいだよ。」
彼がエメラルドを連呼して動揺している。

「とある良く当たる予言師の方がこの鉱山からはエメラルドが出ると言ったのよ。だから、買わせて欲しいの」
私は姉を賢い人間だと思っているが周囲には愚かな女のふりをしている気がして、それがバレないように予言師の助言ということにした。

「ミリアは周りの人間は詐欺師だという教育を受けて来たんだよね、その予言師こそ詐欺師だと思うけれど⋯⋯」
彼が困ったように言ってくるが、姉は詐欺師だと私は思ったことはない。

「万が一、エメラルドが出た時のことを考えて。あなたの瞳の色の宝石よ。他の誰かに簡単に譲って良いものなの?お願いだから私にお金を払わせて、あなたにとって貴重なものを頂くのよ。本当に無償で私に譲ってしまって、エメラルドが出て来たら領民はあなたのことを無能だと勘違いしてしまうわ。私は、それは嫌なの!」

私は彼に懇願した。
その鉱山からエメラルドが出るなんて分からないが、万が一出たらサイラスに迷惑がかかる。