無計画に家出をしようなんて、本当に馬鹿なことをしようとした。

それを阻止してくれたのはやっぱりサイラスだった。

「ミリア・カルマン、君はその程度の女なの?ならば、君を振ったことは俺の人生最大のファインプレーだね。君はアカデミーの首席卒業生。一応、君はエミリアーナ・クラリス以来の才女ってことに帝国ではなっているらしいよ。実際は、こんな自信のない無能な女なのにね!」

サイラスがアカデミー時代のように私を煽ってくれる。
こうやっって、私たちはお互いが弱った時に罵倒するようにして奮起してきた。

「サイラス・バーグ、私を誰だと思っているの? 私はミリア・カルマン。今となっては帝国唯一の公女よ。何だって私の思い通りにできるの。私の価値が血筋だけだと思ったら大間違いよ!」

私は自分の自信のなさを打ち消すように、彼と支え合ったアカデミー時代を思い出し返した。

「よかった、ミリア。大丈夫そうだね。でも、君は事業の才能があると思うよ刺繍サービスが帝国で話題になっているじゃないか」

彼の言葉に私は申し訳なくなった。
あの事業は私の力でうまくいったのではない。

「あの事業は最初すごい赤字で失敗したものだったの。アーデン侯爵にアドバイスを頂いて多額の宣伝費を投入して貰ってやっと軌道にのったのよ。知らなかったけれど事業をするのってとても難しいものだった。私は、アーデン侯爵の後ろ盾や財産、助言ががなければ破産してたかもしれないわ」

私が言った言葉にサイラスが首を傾げて来た。
「いくら投資をしても価値のないものなら軌道にのらないよ。ミリア、自分を信じて、君は本当に奇跡みたいなすごい女の子だよ」

励ましてくれる彼の優しさに、姉の言う通りにして彼に鉱山をおねだりする罪悪感が増幅する。

「今日、あなたに頼みたいのは、この鉱山の採掘権を売ってほしいということなの。エメラルドがたくさん出るらしいから、あなたの言い値で買うわ!」

私は彼に鉱山のことを相談した。