「ミリア、それはすごい才能ですよ。ミリアはピアノの天才です!」

彼は本当に褒めるのが上手だ。
でも、もしそうならこのピアノのスキルで私の能力を周りに示せるかもしれない。

「あの⋯⋯私のピアノはお金になりますか?」

私は恐る恐る彼に尋ねた。
尋ねながらも不安だった。

私は同じ曲を弾けと言われても、気の向くまま弾いているので弾けない。
楽譜におこせば良いかもしれないが、うまくいくだろうか。

「ミリアのピアノは私だけのものにしてはいけませんか? お金を稼ぐことなんて、なんの価値もありませんよ。ミリアのピアノを独り占めする贅沢を夫になる権利を私に与えて欲しいです」

やはり、私のピアノがプロ並みだというのは彼のお世辞だったのだろう。
事業を手広くやり、時に商人のような彼がお金を稼ぐことに何の価値もないと言った。

私は姉からの命令で、多方面で事業を展開し大富豪の妻になる者は当然、自分の力でも稼ぐ能力があることを示さなければならない。

彼からお金を稼ぐことになんの価値もないと言われた後、真逆の金稼ぎの事業をはじめて良いのだろうか。
奇跡の男の言うことを聞くべきか、魔女の姉の言うことを聞くべきか私は悩んだ。