彼女は人前で堂々と私を叱責して来たのに、人払いするほど今日は怒られるのだろうか。
「どうぞ、こちらをお納めください」
私は震える手で、彼女に用意したプレゼントを渡した。
おそらく私の知る彼女なら喜ぶ品。
皇家の刺繍とラキアス皇帝陛下のイニシャルが入ったスカーフ、礼服用の手袋、ハンカチの3点セットだ。
普通なら目の前でプレゼントを開けることは、マナーに反するが姉はそう言ったことを気にしない。
「こんな良いもの貰えないわ、購入させて頂くに決まっているじゃない。定期的にね!」
彼女が指で示した金額に私は嬉しくなり、先ほどの恐怖による震えもとまった。
邸宅が購入できるくらいの金額だ。
「サイラス・バーグと踊った件について、弁明があるのならしなさい!」
急に姉が強い口調で言って来たので、また震えがはじまった。
「ダンスに誘われたら、誘いを受けて踊るのがマナーではないですか?」
姉への反論は一切禁止が、カルマン公爵家の絶対的ルールだ。
だから私は反論にならないよう細心の注意を払いながら応えた。
「アーデン侯爵に他の人とは踊らないことを禁じたのに、自分は元彼と踊ったということよ」
姉は陛下と踊っていたはずなのに、あの時の状況を理解しているようだった。



