手が震え出して、必死に隠す。
手紙のやり取りは、ポールの生活が安定するまでは仕送りをするのに必要だ。
忍び的な人間を使って、やり取りをしていたのでバレないと思っていたのに。
「私には、さっぱりわかりません。そういえば、第2皇子が戦死してしまいましたね。優秀な方だったのに帝国の大きな損失です。皇子達はろくに軍隊としての訓練をしていないのに、象徴として出兵に参加するのは無くさなければならない悪習ですね」
レナード様はまた嘘をついた。
彼は私がポールをどこの国に逃したかまで気がついている。
彼はよく嘘をつくけれど、その嘘は自分のためについているものではない優しい嘘だと私は気がついていた。
「そうなんですか。第2皇子の件は初めて聞きました。」
彼の言う通りだ、結局、皇子が死んでまで帝国民を守ったという事実に感動することで、平民達の帝国運営に対する不満は幾分解消されている。
のんびりしてそうなラキアス皇帝よりも、彼のほうが皇帝としての資質は高かっただろうに。
「ミリアにダンスを申し込んでいれば生きられたのに、彼はミリアに交際を申し込んでしまった。それが、生死を分ける選択だと気が付ける人はいないと思いますよ」
第2皇子は生き延びたくて、カルマン公爵家の後継者として育てられている私に交際を申し込んできた。



