君の事好きになっても良いですか?


マンションを理央君と一緒に出ると、
夜の空気が少しだけひんやりと
していた。

浴衣の袖を整えながら歩くと、
自然と歩幅が小さくなる。


「大丈夫?」
「歩きにくくない?」


理央君が、私のペースに合わせてくれる。

「うん、平気だよ♪」


そう言いながらも内心は
全然平気じゃない……。

ちっ……近いよ……。


肩が触れそうな距離、
浴衣越しから伝わる緊張感。


人通りが増えてきて、
屋台の色んな匂いと人のざわめきが
混じる。
その中でふと、理央君の足が止まる。


「……手、貸そか?」


へっ……?
一瞬、私の呼吸が止まる。



「ほっ……ほら!」
「浴衣だし、人多いし……。」


理由は最もなのに、心臓の音が加速する。
さし伸ばしてくれてる左手……
私の手……乗せていいのかな……。
ちょっとは甘えちゃっていいよね……。


「……うん。」
「お願いします。」


私は小さく返事をして、
手を出す。

理央君の手は、少し汗ばんでいて
だけどしっかりとしていた。

緊張してるの私だけじゃないんだ……
そう思うと少しだけ安心する。


───だけど。

人混みの向こう、
見覚えのある後ろ姿が一瞬よぎった。


晃……?


にっ……似ている人かもしれない。
そう思っても胸がザワつく。





琴音ちゃんの手を取った瞬間、
正直頭が真っ白になった。

これは……ヤバい……。


細くて温かくて……。
離す理由なんてどこにもなかった。


人の流れに押されそうになる度、
自然と前に出て琴音ちゃんを庇う。

守るとか、俺カッコつけすぎかな?





*琴音*

花火が本格的に始まる前、
屋台通りは、既に人で溢れていた。

屋台の道を歩いてるだけなのに、
何故か今日はやたらと視線を感じる。

すれ違う男の人達が一瞬だけこちらを
見て、また振り返る。


……気のせい?

そう思っても、何度も同じ事が続くと
さすがに気付く。


私の浴衣……そんなに変かな……?


少し落ち着かなくなって、
無意識に理央君の袖を掴んだ。


その時、前を歩く女の子達が
理央君の方を見てくる。

ひそひそ小さな声……。


「……前歩いてる浴衣の人、」
「カッコよくない?」
「隣りの子、彼女かな?」


胸の奥がチクリと痛い……。


……見ないで。

あっ……これって独占欲?
認めたくないけど私、
独占欲とかしちゃうんだ。
初めてだよ……こんな気持ち。

私は勇気を出して、理央君との距離を
少し縮めた。


琴音 side 終わり