君の事好きになっても良いですか?



「……ここで」

視線を上げずに、俺は言う。

「去年の東中園の花火大会の日、」
「俺は琴音に告白した。」

琴音の表情が、微かに揺れる。
そして、俺が言ったとどうじに
さっきまで穏やかに吹いていた
風も、子供達の笑い声も、
全てがスローモーションに時が流れる。

「この丘で、花火を見ながら」
「俺は、琴音に好きだって」
「言ったんだ。」

「通学の電車で初めて琴音に」
「出会って、一目惚れした事も。」

俺は、ゆっくりと顔を上げた。
真っ直ぐに、琴音を見る。

言葉一つ一つが、
胸の奥から引き出される。

「それで……琴音は、」
「晃ではなく……俺を選んでくれた。」

「後日、琴音から気持ちを伝えてくれて」
「俺の恋人になってくれた。」


夕焼けが、2人を包む。
琴音は、何ひとつ言わずに
聞いていくれている。

俺は、膝の上で拳を握った。


「記憶が戻らなくてもいい。」
「無理に思い出さなくていい。」

俺は……
一拍、置いて慎重に言葉を続けた。


「それでも……」

声が、少しだけ震えた。

「もう一度、」
「君のことを好きに」
「なっても良いですか?」

ベンチに座ったまま、
逃げ場のないほど真剣な眼差しで
俺はハッキリと気持ちを伝えた。


その言葉を受け取った瞬間、
私の胸の奥が、強く波打った。



——どうしてだろう。

涙が出そうになる。

理由なんて、分からない。
分からないけど……

でも、理央君に、近づきたい。

そう思った瞬間、
私は一歩踏み出していた。

だけど……私の足は……

足元の小さな石に、つま先が引っかかる。

えっ……!!

私……このまま転けちゃう!

また……私……
今度は転けて記憶喪失に
なっちゃうのかな……。

「——っ!!!」

身体が前に傾く。

次の瞬間、強い腕が確かに自分を捕まえた。



俺が、咄嗟に立ち上がり、
琴音を抱き止めていた。

「危な……!」

その衝撃と同時に、
私の視界が白く弾けた。

夏の夜空。
花火大会。

公園の丘の上。
並んで座る背中。

重なる指先。
笑い声。

喧嘩。
涙。

告白。
キス。

——全部。

全部、頭に鮮明にフラッシュバックしてくる。