君の事好きになっても良いですか?


──神谷崎高校 正門


私は、神谷崎高校行くまでの
ルートを覚えていた。
だから、身体が自然と迷わずに
神谷崎高校正門前に到着した。

私……以前も、
理央君に青空ワールドの小説を
借りてたのを返しに神谷崎高校まで
来たっけ。

友達の時の記憶はしっかり残ってるのに、
なんで……よりによって、
理央君と付き合ってる記憶が消えちゃった
んだろう……。

返してよ……私の記憶……。


そんな事を悶々と考えながら、
歩いていたら神谷崎高校の正門に着いた。


正門の前で、私は立ち止まる。
神谷崎の生徒たちが、
次々と通り過ぎる。

通り過ぎる度に、
物珍しい目で私を見てくる生徒が
何人かいる。

やっ……やっぱり緊張しちゃうな。

心臓の音が、やけに大きい。

そんな時……
門の向こうから、
理央君、夏奈ちゃん、遥陽君の
3人が出てくるのを確認した。

その瞬間私は、
考える前に体が動いた。

私は、気付いてもらえるように
はっきりと手を振る。

すると理央君が、最初に気づいた。


理央
「……え?」

えっ……?
えっ……!!?

琴音!?

俺が琴音がここに居ることに
驚き思わず足を止める。

すると次の瞬間、
夏奈と遥陽も足を止める。


俺達3人共、
驚いた表情で琴音を見ていた。

琴音は、
少しだけ緊張しながら近づいて来た。

琴音
「……急に来てごめん」

俺は、言葉を探すように
一拍置いてから答えた。


理央
「……いや……来てくれて……」

声が、少し震えている。
ヤバい……嬉しい……。
琴音が来てくれた……。
もしかして、記憶……戻ったのか?
俺は、淡い期待に心がソワソワと
した。


えっ!?
琴音ちゃん!?
1人で来たの!?
千歌ちゃんは?晃君は?
もしかして、理央に会いに来てくれたの!?

琴音ちゃん……身体をモジモジさせて
可愛い……。

これ、大きな進歩じゃない!?
私は隣にいる遥陽に目線を合わせると、
遥陽も同じ事を思っていたのだと、
悟った。

私と遥陽は、すぐに空気を察した。


夏奈
「理央……じゃ、」
「私と遥陽は先行くね。」

遥陽
「そだな!」
「2人で話したほうがいいでしょ!」


千歌
「琴音ちゃん、」
「また、明日ね!」


遥陽
「琴音ちゃん、」
「理央をよろしくな!」

琴音
「あっ……うん。」
「また明日、電車で!」


そう言うと、
琴音ちゃんと遥陽君は私に
手を振り足早に離れていく。

正門に、理央君と私だけが残った。




2人きり……

その事実を意識した瞬間、
俺の胸の奥が、
ぎゅっと締め付けられる。


おいおい……!
突然すぎて緊張する!
ヤバいヤバい……!
俺は琴音に目をちらっと向ける。


隣に立つ琴音は、
ほんの少し緊張したように背筋を伸ばしていて、
それでも逃げないように、
ちゃんと俺の方を向いていた。

ヤバい……こんなに見つめられると
抱きしめたくなる……。
キスしたくなる……。

……昔なら、
何も考えずに手を伸ばして、
当たり前みたいに隣を歩いてた。

でも今は違うんだ……

俺は、一旦琴音の記憶を戻るまでは、
“恋人ではない距離”を選んだ人間だ。

だから、手を出さない。
声も、距離も、全部慎重になる。

理央
「もしかして、」
「俺に会いに来てくれたの?」


琴音
「うっ……うん///。」

何……そんな照れた顔で頷くんだ。
こんなの俺……理性が保てるか
心配だよ……。
照れる顔を俺は隠して、平気な顔をして話す。


理央
「……来てくれて、ありがとう。」


声が少しだけ低くなるのを、
自分でも分かる。
でも、こうしないと……俺の心が爆発
してしまい琴音にキスをしてしまうから。

そんな俺の気持ちも知らない、
琴音は一瞬驚いたように目を瞬かせてから、
小さく頷いた。

琴音
「ううん……急に来て、」
「ごめんね……。」