次に、俺は遥陽へ電話をかける。
遥陽
「理央?どうした?」
遥陽は少し眠そうな声で
電話に出た。
理央
「琴音が……事故に遭った」
その一言で、
遥陽は完全に目が覚めたという
声に変わっていた。
遥陽
「……は!?」
「冗談はやめろよな。」
理央
「冗談なわけないだろ!」
「俺だって冗談であって欲しいよ。」
「階段から落ちて……今、手術中」
遥陽は、言葉を失う。
琴音ちゃんが……階段から落ちた……。
倒れている姿が、頭の中で勝手に再生される。
……嘘だろ……
なんで……そんな事になってんだよ。
遥陽
「病院は……」
「……どこだ。」
俺は自分でも驚くぐらい
低く、震えた声で話していた。
理央
「〇〇総合病院」
遥陽
「……分かった。」
短く答えた後、電話は切れた。
俺は、歯を食いしばる。
何もできなかった自分への、
苛立ちと恐怖。
だけど……大切な友達が大変な
目に遭っている。
俺は急いで病院に向かった。
理央が電話している最中、
俺も電話をしていた。
相手は、千歌。
千歌
「はいはい!」
「アキ君どーしたの?」
晃
「……千歌、」
「落ち着いて、聞けよ。」
アキ君の声が、
いつもより低い。
一体どうしたんだろう……。
晃
「琴音が……事故で病院に運ばれた」
千歌
「……え?」
「待って……」
「話しがついていけてない……。」
琴音ちゃんが事故にあって、
病院に運ばれた?
えっ……?
今日、琴音ちゃん……理央君と
花火大会だ……よね?
えっ……?
なんで……何でそんな事なってんの?
私は、少しパニックになりかけていた。
晃
「今、手術中。」
私は、
一瞬、息を呑んだ。
琴音ちゃんと過ごした、
何気ない日常。
一緒に笑った放課後。
何気ない会話。
それが、
一気に壊れる感覚。
千歌
「……今、どこ?」
晃
「〇〇総合病院」
「……行く!」
「すぐ行く!」
即答だった。
電話を切った後、
千歌は胸に手を当てる。
病院は私の家から近い。
あの時の救急車のサイレン……
琴音ちゃんだったの……?
……怖い……
失うかもしれない、
という現実が、
急に重くのしかかる。
それから、
時間はゆっくり、
でも確実に進んだ。
私はすぐに家を飛び出し、
病院に向かった。
俺と晃が各自、電話を終えて
しばらくすると、
最初に、千歌ちゃんが
不安を隠せない表情で現れる。
その後、
夏奈が、
息を切らして病院に駆け込む。
遥陽も、血相を変えて
無言で病院に駆け込んできた。
そしてみんな、
同じ方向を見ていた。
手術室のランプ。
まだ、消えない赤い光。
誰も、
多くは話さなかった。
ただ、
祈るしかなかった。
——琴音が、
無事であることを。



