君の事好きになっても良いですか?



病院の自動ドアが、
重たい音を立てて開いた。

消毒液の匂い。
白くて冷たい床。
行き交う医師と看護師の早足。

俺と晃は、
ほとんど同時に受付へ駆け寄っていた。


「琴音……琴音は……!」

言葉にならない晃の声が受付内に
響いていた。

理央
「先ほど救急搬送された」
「小川琴音です。」

俺が名前を告げた瞬間、
受付の表情が変わる。

受付
「お母さまが、奥でお待ちです。」

案内された先で、2人は見つけた。

長椅子に座り、
両手をぎゅっと握りしめている、琴音のお母さん。


「……お母さん。」

晃が声をかけると、
お母さんは顔を上げた。

泣いていたのが一目で分かる、
赤く腫れた目。

琴音の母
「晃君……理央君。」
「来てくれて……」
「ありがとう……。」


琴音のお母さんの震える声。
胸が締め付けられる……
苦しい……痛い……。

理央
「琴音は……」

俺が問いかけると、
琴音のお母さんはゆっくり首を振った。

琴音の母
「今……手術室に運ばれたの」

「階段から落ちた衝撃で……」
「頭を強く打って……」

その言葉に、
俺の顔から血の気が引く。


「命に別状は……?」

晃が、
必死に抑えた声で聞く。

琴音の母
「……今は、まだ……」
「なんとも……。」

その曖昧な答えが、
何より重く胸にのしかかった。

琴音の母
「処置が終わるまで……」
「ここで待つしかなくて……。」


俺達3人は、ただ無言で座った。

時計の秒針の音だけが、
やけに大きく響く。

——俺は無言の中、
ポケットの中で拳を握りしめた。

……みんなに、知らせないと。

震える手で、
スマホを取り出す。

最初にかけたのは、
夏奈だった。

夏奈
「理央?」
「どうしたの!?」
「今日、琴音ちゃんと花火大会は?」

まだ、何も知らない夏奈は明るい声で
問いかけてきた。

その声を聞いた瞬間、胸が詰まる。

理央
「……落ち着いて聞いて。」

俺は、言葉を選びながら話した。

理央
「琴音が……事故に遭って……」


一瞬で、電話の向こうが静まり
かえるのがわかった。

夏奈
「……え?」
「今……何て……」

理央
「今、病院に運ばれて……手術中で……」

夏奈
「……嘘……」
「嘘でしょ?理央……。」
「嘘だって言ってよ!」

私の声が、
かすかに震えていた。

ねぇ……誰か嘘だって言ってよ。
こんなの……あんまりだよ……。

頭の中に、
一気に琴音ちゃんの顔が浮かぶ。

笑ってる顔。
少し強がるところ。
何でも一人で抱え込むところ。

……なんで……琴音ちゃんなの……

夏奈
「今……どこの病院なの?」

私の声は、
もう涙を必死に堪えていた。

理央
「〇〇総合病院」

夏奈
「理央……わかった。」
「……すぐ行く。」

理央との電話が切れた後、
私はその場に立ち尽くした。

胸の奥が、
じわじわと冷えていく。

……お願い……お願いだから……
琴音ちゃん、無事でいて……