―――電車内。
白鷺駅から乗った電車は、ゆっくりと走り出す。
隣に座る琴音は、少しだけ肩が強張っていた。
それもまた可愛いんだなぁ。
「……緊張してる?」
俺が聞くと、琴音は小さく頷く。
「うん……だって、理央の家だし」
「お母さんにも会うかもしれないし……」
「大丈夫」
「うちの母さん、めちゃくちゃ優しいから」
「安心して大丈夫だよ。」
「それ、理央基準じゃ……」
そう言って、二人で小さく笑う。
「……あのね、理央。」
琴音が、俺の袖を少し引いた。
「迎えに来てくれて、嬉しかった」
「校門に理央がいるの見えた瞬間、」
「すごく安心したの。」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
いつも、琴音は幸せな気持ちになれる
ような言葉を言ってくれる。
「……俺も。」
「琴音を迎えに行ける立場になれたの、」
「正直、夢みたい。」
しばらく電車に乗って会話をしているだけで、
時間がスローモーションのように
ゆっくり流れ出したような感覚になる。
こうして電車での時間を楽しんでいると
いつの間にか、
綾部駅が近づくアナウンスが流れる。
「琴音。」
「これから、色んな初めてを」
「一緒に増やしていこうな」
「……うん」
琴音は、俺の手をぎゅっと握った。
その手から伝わる体温はじゅわっと
俺の手のひらに浸透した。
───理央宅
玄関の前でインターホンを押すと、
すぐにドアが開いた。
「おかえり、理央――」
そこに立っていたのは、母さん。
そして、その後ろで固まる琴音。
「……あら?」
母さんは一瞬で状況を察し、にっこり笑った。
「あなたが琴音ちゃんね?」
「話はたくさん聞いてるわ」
理央の……お母さん!
どどどど……どうしよう……
緊張して、体も口も動けない。
まさか、本当に会うなんて思ってなかった。
私……髪型とか身だしなみとか、
変じゃないかな……?
とにかく、早く挨拶しなきゃ!
「は、はじめまして……!」
「小川琴音です!」
深々と頭を下げる。
すると、理央のお母さんは、
優しく声をかけてくれた。
「ふふふ♪」
「そんなに緊張しなくていいのよ。」
「さあ、上がってちょうだい。」
母さんに促され、
琴音は少し緊張したまま玄関に足を踏み入れた。
小さく”お邪魔します”と言って、
きちんと靴を揃える姿が、もう可愛い。
俺……今日、心臓いくつあったら
足りるのだろう……。
「ふふ、礼儀正しい子ね」
「理央、いい彼女じゃない。」
「そんなの……分かってるよ。」
少し照れながら母さんに答えていると、
琴音がそっと俺を見上げてきた。
その視線に、胸がきゅっとなる。
「琴音ちゃん、荷物はここでいいわよ」
「今日はゆっくりしていってね。」
「は、はい……ありがとうございます。」
「おやつ、用意してあるから後で持っていくわね」
母さんはそう言って、キッチンへ向かった。
良かった……母さん、リビングにあ
「琴音、」
「俺の部屋……行こ。」
小声で言って、俺は自分の部屋へ案内した。
「うっ……うん。」


