照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。

 その美しさに感動し、足早に家に帰り玄関のドアを開ける。

『お母さん、空にすごく綺麗なお月様が……』そう言いかけて、我に返る。

 しんとした家の中から、母の声が聞こえることはなかった。

 綺麗なものを見た感動を伝えたいと思った人は、もうここにはいない。それを確認するたびに、さみしさで心臓がぎゅっと苦しくなった。

 俺が小さな声でそうつぶやくと、真帆ちゃんは驚いたように動きを止め、それから『うん』とうなずいた。

 揺れる川面を眺めながら、ぽつりぽつりと話をする。

『もう一年経つのに、まだふっと思い出すんだ。お父さんのこと』

 俺の両親は離婚しそれぞれ別の人生を選ぶことを決めたけれど、真帆ちゃんと涼成はちがった。

 ある日体調を崩した父親が念のためと入院すると、大きな病気が見つかった。そして半年の入院生活ののちに亡くなった。

 弱っていく父親を見守る日々は、きっととてもつらく苦しかっただろう。