照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。

 そんなやりとりをしていると、不意に海斗くんの表情が変わった。彼は顔を上げ、なにかに気付いたように周囲に視線を走らせる。

「海斗くん?」

 私がたずねると、海斗くんは「なんでもない」と首を横に振った。

「行こうか」と私を促しまた歩きだす。

 しばらく歩き、私の住むアパートの前に到着した。

「海斗くん、送ってくれてありがとう」

 お礼を言って別れようとすると、海斗くんが一歩私に近づく。そして耳もとに顔を寄せた。

「――ごめん。ちょっとだけ部屋に入れてもらっていい?」

 小さな声でささやかれ、「え……っ!?」と跳び上がった。

「だめ?」
「だ、だめじゃないけど……」

 私の部屋に入るって、それってもしかして……。

 変な想像をしそうになり、慌てて首を横に振った。

 海斗くんが私相手に、なにかするわけないからっ。

 そう自分に言い聞かせ、動揺を隠して鍵を開ける。

 海斗くんはアパートの狭い玄関スペースに入ったけれど、靴も脱がずその場に立ったままだった。