照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。

 呼び捨てにするだけなのに、そこまで嫌がられるとは思ってなかった。

「なんで無理なの?」

 不思議に思いたずねると、海斗くんは「なんでって……」と顔をそらしたまま、大きく息を吐き出す。

「……今はまだ、真帆ちゃんって呼ばせて」
「今はまだ?」

 私が首をかしげているうちに、海斗くんはまた歩きだした。その後ろを追いかける。

 彼と一緒に静かな夜道を歩く。

 乾いた夜風に乗って、かすかな花火のにおいがした。どこかの公園で子どもたちが夏の終わりの花火を楽しんでいるのかもしれない。

「そういえば、海斗くんのお父さんは元気にしてる?」

 ふと思いついてたずねると、隣を歩く海斗くんがうなずく。

「あぁ。今は仕事で関西にいる」
「じゃあ、海斗くんひとりなんだ」

 さみしい思いをしているんじゃ……と表情を曇らせた私を見て、海斗くんが苦笑した。

「そんな心配そうな顔しないで。もう小さな子どもじゃないんだから、ひとりでもさみしくないよ」
「それもそっか」