照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。


 誰もいない武道場でひとり、静かに息を吐き出した。

 あごを引き、正面を睨むように一点に視線を定める。両手で握った竹刀を頭上に大きく振りかぶり、軸がぶれないよう体幹を意識しながら振り下ろす。

 その動作を、無心で繰り返した。

 道場に竹刀が空を切る音が響く。

 素振り用の竹刀は公式試合で使われるものよりも重く、一キロ以上ある。単調な動作を繰り返すうちに、肩や腕、背中にまで疲労感がたまり、額に汗が浮かぶ。

 それでも前を見据え、淡々と竹刀を振り続けた。



 ――余計なことを考えるな。煩悩を振り払え。

 全身から汗が噴き出し、息が上がってもまだ足りない。もっともっと自分を追い込まないと。

 そう言い聞かせているのに、気を抜くと真帆ちゃんとのやりとりが勝手によみがえった。

『本当に、ありがとうございました』

 お礼を言ってこちらを見上げる真帆ちゃんの顔を思い出しただけで、心臓が大きく跳ねる。