照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。

 しかも別れ際にいきなり『真帆ちゃん』と名前を呼ぶなんて……。

 なんとか平静を装いパトロールに戻ったけれど、俺の動揺が彼女に伝わっていたかもしれない。

 思い返せば返すほど後悔と羞恥心が込み上げ、地面に深い穴を掘って埋まりたくなる。

「せっかく真帆ちゃんと再会できたのに……」

 俺は自転車を止め、住宅街を照らす街灯を見上げながらそうつぶやいた。



 


 彼女と出会ったのは、俺が小学四年生のとき。

 両親が離婚し、俺は父とふたりで暮らしていた。優しい父だったけど、仕事と子育てを両立できるほど器用な人ではなかった。

 父が帰ってくるのは毎晩夜遅く。俺は誰もいない家に帰り宿題をし、コンビニで買ったお弁当を食べ、風呂に入って眠る毎日を送っていた。

 ひとりきりの家で眠るのはさみしかったけど、一生懸命働いてくれている父にそんな気持ちをぶつけるわけにもいかず、ベッドの中で丸くなりただ孤独に耐えていた。