照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。

「では、自分はパトロールに戻るので」

 海斗くんは短く言い、私に背を向けた。自転車にまたがりペダルを踏むと、その背中はすぐに小さくなった。

 私はアパートの前に立ち尽くし、海斗くんが去っていった道を眺める。

「なんだ。海斗くん、気付いてたんだ……」

 真帆ちゃんと呼ばれたことに、懐かしさが込み上げる。

 だけど、海斗くんは私が涼成の姉だとわかったうえで他人行儀な態度を取っていたんだと思うと、同じくらいさみしくなった。

 最後に会ってから十六年も経って、海斗くんも大人になったんだから、子どもの頃のように私を慕ってくれるわけがないか。

 そんなことを考えながら鍵を開け、部屋に入る。カーテンを閉めようとして、手が止まった。

 さっきまでそこに、海斗くんがいた。

 立派な警察官になった彼の姿を思い出しながら、私は夜の住宅街をぼんやりと見下ろした。