I 編む

会社に障害者雇用の社員がいることは知っていたものの、今まで明日美と接点はなかった。
そしてこれまでの人生で障害がある人と関わった経験もほとんどない。

とるもとりあえずネットで【障害者雇用】【仕事】などと検索するところから始まった。

ほどなく片山陽太さん、北岸梢さんと面談の場が設けられたものの、そこで突きつけられたのは非情ともいえる現実だった。
ちなみに沖口課長は「用事がある」とその場に顔を出さなかった。

「仕事がないんです！」
二人の訴えは、シンプルで切実だった。

陽太さんは入社して一年弱、梢さんは半年ほどだという。
正直にいうと、明日美にもかなり障害者バイアスとでもいうべきものがかかっていた。
善良な弱者としての存在と手を取り合う健常者という構図である。“愛” をテーマにしたテレビ番組などで繰り返しとりあげられるストーリーを、そのまま受け取っていた。

だが、二人が明日美にぶつけてきたのは強い憤りと、深い悲しみだった。
現状会社が二人に割り当てている仕事は、シュレッダー作業と資材の発注・補充くらいなのだという。