バッグは会社に置いたままなので、社員証とビルの入館証を首から下げて、スマホを持っているだけの軽装だ。財布も身につけていない。
それでもスマホさえあれば、キャッシュレス決済でなんとかなるのがありがたい。
明日美は抹茶ラテを注文し、聡はブラックコーヒーだった。
テーブル席に腰を落ち着けると、「あらためまして金融事業本部デジタルオファリング統括部システム開発チームの二階堂です」と一息に言うと、長いですね、とつぶやいて手にしたコーヒーカップに視線を落とした。
開発チームの “チームリーダー” でしょう、と明日美は内心つけ足して「庶務部の橘です」と言った。
なんて短くてちっぽけなんだろう。
すみません急に誘って、いえそんな、といういささか儀礼的なやり取りが交わされる。
社内で、あるいは社外でも名を知られている二階堂聡と、こうして二人で話をするのは初めてだった。
間近で顔を合わせても、つくづく今どきという言葉が似つかわしい人だ。
顔立ちもスタイルも、すべてがすんなりと整っている。
ノータイの長袖シャツという身なりで、かるいパーマをあてた髪型も実に決まっている。
不恰好なところがなに一つ見当たらない、スマートな印象を見る者に強く与えるタイプだ。
それでもスマホさえあれば、キャッシュレス決済でなんとかなるのがありがたい。
明日美は抹茶ラテを注文し、聡はブラックコーヒーだった。
テーブル席に腰を落ち着けると、「あらためまして金融事業本部デジタルオファリング統括部システム開発チームの二階堂です」と一息に言うと、長いですね、とつぶやいて手にしたコーヒーカップに視線を落とした。
開発チームの “チームリーダー” でしょう、と明日美は内心つけ足して「庶務部の橘です」と言った。
なんて短くてちっぽけなんだろう。
すみません急に誘って、いえそんな、といういささか儀礼的なやり取りが交わされる。
社内で、あるいは社外でも名を知られている二階堂聡と、こうして二人で話をするのは初めてだった。
間近で顔を合わせても、つくづく今どきという言葉が似つかわしい人だ。
顔立ちもスタイルも、すべてがすんなりと整っている。
ノータイの長袖シャツという身なりで、かるいパーマをあてた髪型も実に決まっている。
不恰好なところがなに一つ見当たらない、スマートな印象を見る者に強く与えるタイプだ。


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)