橘さん。
自販機の前で、耳になじんだ声がした。
視線を振り向けると、はたして二階堂聡が休憩コーナーからこちらに近づいてくる。

左胸の奥が小さくバウンドした。
「二階堂さん」

思えばあの夜、この自販機でお釣りの取り忘れを見つけて、そこから全てが始まったのだ。

「休憩中ですか?」

いや、と聡がかるく首を横に振る。
「橘さんが来るのを張ってたんだ。行動パターンを推測して、飲み物を買いに来そうな時間を狙ってた。ようやく捕まえたよ」

社内でもトップクラスに忙しいだろう彼が。
「わたしも、二階堂さんに会えないかなって思ってました。お礼が言いたくて。インテグラルのことも、それに…サンクス大賞に投票してくれて、ありがとうございました」

「サンクス大賞、受賞おめでとう」

「ありがとうございます。でもほんとに、わたしの力じゃ全然ないですよ」
それは偽らざる本心だった。

「欲しいと思って貰えるものじゃない。みんなの気持ちだから」

「少しでも感謝の気持ちを返せるように、これからも頑張ります」
明日美はこぶしを握って、小さくガッツポーズを作ってみせる。