頼める仕事が増えたこと、なにより以前に比べて二人の表情が格段に生き生きしていることが嬉しい。
それもこれも二階堂聡のおかげだ。

これきりの縁かもしれないけれど。
陽太さんと梢さんの分まで、感謝の気持ちは彼にきちんと伝えたかった。
こんど会社ですれ違う機会があったら、逃さずお礼を言わなくては———

「橘ちゃん、橘ちゃん」
ボリュームを絞った女性の声に振り向くと、すこし離れた場所で、人事部の課長である関根美和子がちょいちょいと手招きしていた。
眼鏡の奥の瞳が笑みの形を(かたど)っている。

なんだろう、いまいち心当たりがないまま腰をあげて美和子のそばに行く。
そのままキャビネットの陰に導かれた。

「あのね、ほんとはまだナイショなんだけど」
手にした紙をちらりと見せてくる。【サンクス大賞】という文字が目に飛びこんできた。

「あ、これ…」
人事部が今期から始めた社員同士で感謝を伝え合うという社内表彰制度だ。
一人一票で、部署や役職に関係なく、感謝を伝えたい人に任意で投票できるというものだった。
ちなみに明日美は、日々の忙しなさで忘れていたのが半分、そこまで感謝したいエピソードが思いつかなかったのが半分で、投票していなかった。