入社の面接のときに、そういった病歴や過去は包み隠さず話し、会社もそれを承知の上で採用したはずなのだが。

現実には「干されて」いる。
人事部長も沖口課長も梢さんを腫れ物扱いにする。関わって自分に火の粉が降りかかるのが怖いのだ。
北岸さんに負担かけちゃいけないから、女性がサポート役のほうがいいよね、橘さんよろしく頼むよと、明日美に投げて知らん顔を決めこんでいる。

「———もったいないと思うんです。せっかくやる気がある社員がいるのに、活かせないって。そりゃ配慮やサポートは必要ですけど」

「保身に入っているんでしょう」
誰がとは言わないまでも、聡がちらりと辛辣な一面を見せる。

唐辛子とスパイスの効いた料理のおかげで、舌から胃まで火照り、そこから全身に熱が広がっている。
気分までどこか高揚して、いつもより饒舌になっている自覚があった。
不思議な料理の効用だ。そこまで計算して彼はこの店に誘ったのだろうか。

向かいの聡も頬を紅潮させ、ひたいにはうっすら汗が浮いている。
クールな表情は変わらないが、彼も人間なんだよなと妙なところで得心してしまう。