分からない、二階堂聡の意図が。
好意を寄せられていると思うほど、明日美はうぬぼれ屋ではない。
刺さる男性には刺さるタイプの容姿なのか、これまで男性に言い寄られた経験がないわけではなかった。
だが彼らからは、隠そうにも開き気味な瞳孔からにじむ下心が伝わってきて、明日美はいつもたじろいでしまうのだ。
聡の態度には下心のしの字もなく、ビジネスライクでさえあるのだが。
この青年は、何かを秘めている。並んでカレー屋に向かいながら、直感がそう告げる。
それはそれとして、もう少しおしゃれしていればよかったなと、他方ではつまらないことを考えてしまう。
カットソーにフレアスカートという普段通りのオフィスカジュアルだ。髪はシュシュで一つに結んだだけで、会社を出る前にリップを塗り直した。
食事をしたら取れてしまうけど、せめてもの見栄だ。
ちょっと歩く、という彼の言葉どおり十五分ほど歩いただろうか。
オフィス街から外れて、中低層の建物が立ち並ぶ風景に変わった。人通りも減って閑静な地区だ。
表通りから一本入ってゆるやかな坂を上がる途中で聡が足を止めた。
好意を寄せられていると思うほど、明日美はうぬぼれ屋ではない。
刺さる男性には刺さるタイプの容姿なのか、これまで男性に言い寄られた経験がないわけではなかった。
だが彼らからは、隠そうにも開き気味な瞳孔からにじむ下心が伝わってきて、明日美はいつもたじろいでしまうのだ。
聡の態度には下心のしの字もなく、ビジネスライクでさえあるのだが。
この青年は、何かを秘めている。並んでカレー屋に向かいながら、直感がそう告げる。
それはそれとして、もう少しおしゃれしていればよかったなと、他方ではつまらないことを考えてしまう。
カットソーにフレアスカートという普段通りのオフィスカジュアルだ。髪はシュシュで一つに結んだだけで、会社を出る前にリップを塗り直した。
食事をしたら取れてしまうけど、せめてもの見栄だ。
ちょっと歩く、という彼の言葉どおり十五分ほど歩いただろうか。
オフィス街から外れて、中低層の建物が立ち並ぶ風景に変わった。人通りも減って閑静な地区だ。
表通りから一本入ってゆるやかな坂を上がる途中で聡が足を止めた。


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)