あった。
二階堂聡のインタビューが写真入りで掲載されている。
ソフトウェア開発の中でも、銀行や信用金庫などの金融機関を顧客にしている金融事業本部に所属し29歳の若さで開発チームのリーダーという、名実ともに社のホープだ。だからこそこうして選ばれるわけだが。
それにしても自分の会社のことなのに、彼が語る仕事の内容が半分くらいしか理解できないのが情けない。

「AI」「クラウド」「データサイエンス」といった言葉が並ぶのは業界用語だから必然として。

「ニーズベースとシーズベースの最適解」「ミクロ・マクロな視点で」「スキルトランスファーができる体制」などと横文字が多用されているのを読むと、やや鼻についた。これは…やっかみだろうか。
同じ会社の社員でありながら、住んでいる世界が違う。

こちらが昭和なら、あちらはさしずめ令和の最先端だ。

すらりとした人影がデスクの間を縫ってこちらに近づいてくる。
何気なく目をやって相手の正体に気づくと、明日美は慌ててウィンドウを閉じた。

二階堂聡その人だ。なんの用だろう。
足りない備品があるのか、それとも共有スペースにコーヒーでもこぼしてしまったとか…