「会社は法定雇用率が決められているから、障害者枠を埋めるために僕らを雇っただけなんです」
陽太さんはほとんど見えない目に怒りをにじませる。若さもあって、感情をストレートに表現する。
「活用する気なんてこれっぽっちもない。わたしたちは透明人間のようなものです」
身振り手振りを交えて(手話なのかもしれない)梢さんは懸命に言葉を紡ぐ。
彼女の発音は多少不明瞭ながら、まずまず聞き取れる。
まったく聞こえないわけではなく難聴で、補聴器を使用している。読唇術や発声の訓練のおかげで、コミュニケーションに支障はなかった。
二人の勢いに、明日美はすっかり気圧されてしまった。
「すみません…そんなこととはまったく知りませんでした」
言いながら、じわじわと現実がしみてくる。
従業員数が一定以上の企業では、法定雇用率に応じた障害者を雇用することが義務づけられている。
明日美たちが所属する会社GBBコーポレーションは従業員が千人を超えており、当然例外ではない。
法定雇用率をクリアするために “とりあえず” 雇用した。
ほったらかしというわけにもいかないので、ポーズとして[D &I推進チーム]を作ってみた。
…そういうことなのだろうか。
陽太さんはほとんど見えない目に怒りをにじませる。若さもあって、感情をストレートに表現する。
「活用する気なんてこれっぽっちもない。わたしたちは透明人間のようなものです」
身振り手振りを交えて(手話なのかもしれない)梢さんは懸命に言葉を紡ぐ。
彼女の発音は多少不明瞭ながら、まずまず聞き取れる。
まったく聞こえないわけではなく難聴で、補聴器を使用している。読唇術や発声の訓練のおかげで、コミュニケーションに支障はなかった。
二人の勢いに、明日美はすっかり気圧されてしまった。
「すみません…そんなこととはまったく知りませんでした」
言いながら、じわじわと現実がしみてくる。
従業員数が一定以上の企業では、法定雇用率に応じた障害者を雇用することが義務づけられている。
明日美たちが所属する会社GBBコーポレーションは従業員が千人を超えており、当然例外ではない。
法定雇用率をクリアするために “とりあえず” 雇用した。
ほったらかしというわけにもいかないので、ポーズとして[D &I推進チーム]を作ってみた。
…そういうことなのだろうか。


![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)
![he said , she said[1話のみ]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1740766-thumb.jpg?t=20250404023546)