『まま……まま……』
小さな声が、私の鼓膜を震わせた。
聞き馴染みのある、可愛らしい声。
(フィオ、あなたの声……なの?)
私が心の中で問いかけると、ふふ、と頷く声。
枢機卿の魔力によって、空間に浮かんでいるフィオが、真っ直ぐに私を見つめていた。
『ママを……まもる……』
それは、生まれたばかりのフィオの言葉。
まだ三時間毎に夜泣きして、熱いミルクは飲めなくて、おむつも一人では代えられない。
でも、いつも一緒に過ごした私が命の危機に晒されていることは、彼にも分かったのかも知れない。
すると、フィオの体が眩く光り始めた。
キラキラと瞬き、それはまるで星の光のような、金色の輝きだった。
「なっ……!?」
地面から上半身を起こしたアーサーさんが、光を放つフィオを見て驚きの声を上げる。
枢機卿の放つ毒々しい濃い紫の魔力ではない、綺麗な澄んだ眩しい光。
魔力はその者の性質を表すと聞いたことがある。
だとしたら、フィオの魔力はこんなにも、純粋で輝いているのだと。
「忌み子め……! 『共鳴』の覚醒か……!?」
真っ暗な草原に急遽まばゆい光りが輝き、枢機卿は眩しそうに、目の前に腕を掲げ顔を逸らしている。
私の危機を察知し、救いたいという気持ちが枢機卿の魔力に『共鳴』している。
すると次の瞬間、
パリィィンッ!!
耳をつんざく破裂音が響き渡り、
「ぐわあぁ!!」
光の衝撃波が、枢機卿の体を吹き飛ばした。
目で追うのが精一杯だったが、光の束が枢機卿の体を貫く速さで飛んで行ったのだった。
枢機卿は白目を剥き、口から泡を吹いている。
どうやら、気絶をしているようだった。
私とアーサーさんに向けられていた枢機卿の魔力を、さらに強大なフィオの力で本人に跳ね返したのだろう。
それを一身に受けた枢機卿は、意識を失っている。
枢機卿が気絶したため、私の首を絞めていた魔力の縄は解除された。
地面に足をつけ、ようやく大きく息を吸う。
「けほっ、けほっ……! はぁ…」
深呼吸をし、酸素を体全身に行き渡らせる。
生まれて初めて味わった苦しさと絶望感に、本当に、死ぬかと思った。
同じく魔力から解放されたアーサーさんが、地面から立ち上がり私の背中をさすってくれる。
「フィオ、この魔力は君がやったのか……」
「あーう!」
フィオはまだ金色の光に包まれて、ふわふわと浮かんでいた。
自身の放った魔力で、凶悪な枢機卿を倒したことなど微塵にも感じない、無邪気で純粋な笑顔。
私が両手を広げ、浮かんでいるフィオに近づき、そっと抱き留める。
赤ちゃん特有の甘いミルクの香り、柔らかいほっぺに頬擦りする。
そのフィオの額には、「安堵」という文字が書かれていた。
彼は今、私とアーサーさんを救えて安心しているのだと、育児チートスキルが教えてくれている。
「聖女ルイズ様は、とても優秀で誉れ高き方だった。その血を引いているのなら、この子の力は何ら不思議ではない」
聖女様を知っているアーサーさんは、私に抱かれるフィオの髪を撫でながら、ほっと息をついた。
小さな声が、私の鼓膜を震わせた。
聞き馴染みのある、可愛らしい声。
(フィオ、あなたの声……なの?)
私が心の中で問いかけると、ふふ、と頷く声。
枢機卿の魔力によって、空間に浮かんでいるフィオが、真っ直ぐに私を見つめていた。
『ママを……まもる……』
それは、生まれたばかりのフィオの言葉。
まだ三時間毎に夜泣きして、熱いミルクは飲めなくて、おむつも一人では代えられない。
でも、いつも一緒に過ごした私が命の危機に晒されていることは、彼にも分かったのかも知れない。
すると、フィオの体が眩く光り始めた。
キラキラと瞬き、それはまるで星の光のような、金色の輝きだった。
「なっ……!?」
地面から上半身を起こしたアーサーさんが、光を放つフィオを見て驚きの声を上げる。
枢機卿の放つ毒々しい濃い紫の魔力ではない、綺麗な澄んだ眩しい光。
魔力はその者の性質を表すと聞いたことがある。
だとしたら、フィオの魔力はこんなにも、純粋で輝いているのだと。
「忌み子め……! 『共鳴』の覚醒か……!?」
真っ暗な草原に急遽まばゆい光りが輝き、枢機卿は眩しそうに、目の前に腕を掲げ顔を逸らしている。
私の危機を察知し、救いたいという気持ちが枢機卿の魔力に『共鳴』している。
すると次の瞬間、
パリィィンッ!!
耳をつんざく破裂音が響き渡り、
「ぐわあぁ!!」
光の衝撃波が、枢機卿の体を吹き飛ばした。
目で追うのが精一杯だったが、光の束が枢機卿の体を貫く速さで飛んで行ったのだった。
枢機卿は白目を剥き、口から泡を吹いている。
どうやら、気絶をしているようだった。
私とアーサーさんに向けられていた枢機卿の魔力を、さらに強大なフィオの力で本人に跳ね返したのだろう。
それを一身に受けた枢機卿は、意識を失っている。
枢機卿が気絶したため、私の首を絞めていた魔力の縄は解除された。
地面に足をつけ、ようやく大きく息を吸う。
「けほっ、けほっ……! はぁ…」
深呼吸をし、酸素を体全身に行き渡らせる。
生まれて初めて味わった苦しさと絶望感に、本当に、死ぬかと思った。
同じく魔力から解放されたアーサーさんが、地面から立ち上がり私の背中をさすってくれる。
「フィオ、この魔力は君がやったのか……」
「あーう!」
フィオはまだ金色の光に包まれて、ふわふわと浮かんでいた。
自身の放った魔力で、凶悪な枢機卿を倒したことなど微塵にも感じない、無邪気で純粋な笑顔。
私が両手を広げ、浮かんでいるフィオに近づき、そっと抱き留める。
赤ちゃん特有の甘いミルクの香り、柔らかいほっぺに頬擦りする。
そのフィオの額には、「安堵」という文字が書かれていた。
彼は今、私とアーサーさんを救えて安心しているのだと、育児チートスキルが教えてくれている。
「聖女ルイズ様は、とても優秀で誉れ高き方だった。その血を引いているのなら、この子の力は何ら不思議ではない」
聖女様を知っているアーサーさんは、私に抱かれるフィオの髪を撫でながら、ほっと息をついた。
