2人の軌跡を、一番近くで見てきたのはわたし達だという自負がある。

自分のことみたいに嬉しくなるのも当然だよね。


「結子の式の時、ドレス新調しちゃおっかな。何色がいいと思う?」

「手持ちはネイビーだろ。深い緑とかも似合うと思うけど」

「深い緑かぁ。色々見てみるよ」

「うん。また候補見せて」


何気ない会話を交わしながら、有斗がわたしの右手をとった。

薬指に嵌めている指輪をそっと撫でられ、何となく会話が途切れる。


有斗の肩に体重を預けると、有斗もまたわたしの頭に頬を乗せた。

テレビもついていない広いリビングは柔らかいオレンジ色の照明に照らされていて、心地よい静寂が広がっている。

帰らなきゃいけないけど、離れ難いなぁ……。有斗の温もりを右半身に感じながら、ゆっくりと目を閉じた。




──有斗と付き合い始めて、もう7年。


高校を卒業し短大に進学したわたしは、3年間の学生生活の後、歯科衛生士として働き始めた。

ご縁があって働くことになったデンタルクリニックは地元から数駅のところで、今に至るまで一人暮らしはせずに実家から通っている。