続・幼なじみの不器用な愛し方

「──見えるかな? このチカチカしてるの」


初めての内診台。薄いピンク色のカーテンの向こうから、物腰の柔らかいおじさん先生の声が聞こえる。

傾斜した内診台の右側にはモニターがあり、ドラマなんかでしか見たことのなかった白黒の映像の中で規則的に点滅する何かが見えた。


「これね、赤ちゃんの心臓です。──うん、元気に動いてるね」


午前の診療に滑り込んだ近くのレディースクリニックは、平日だというのにそれなりに混雑していた。

心の準備をする間もなく尿検査を行い、案内された診察室で先生の問診を受けた。

その後、部屋の奥に設置された内診台で内診を受け──わたしの中に、もう一つの命が芽生えていることが確定してしまった。


「最終月経から計算すると……7週6日。明日でちょうど妊娠3ヶ月だね」

「さんかげつ……」


そうは言われても、全然ピンとこない。

最後に生理が来たのがちょうど2ヶ月前くらいだから、そこから計算して3ヶ月なのか。

へぇ、妊婦さんの何ヶ月とかって、そういうふうに計算するんだ。


モニターに映る赤ちゃんの心臓だという点滅をぼうっと眺めながら、他人事みたいに思う。

あまりに急転直下の出来事に、実感なんて少しもない。

ここ最近不調だったのは間違いないけれど、それがお腹に赤ちゃんがいるからだなんて少しも考えていなかったんだもの。