続・幼なじみの不器用な愛し方

指輪くらいなんて、何それ。

新しいのなんて、何なのそれ。


いつもは落ち着く優しい声が、今は癇に触る。

高校生の時みたいな、恋心を見せないようにしていたぶっきらぼうな声で、「あんな大事なもん、失くすなよ」って怒られた方がよっぽどよかった。


『ちょ……落ち着けよ。どうしたんだよ。何かあったのか?』


──ぷつん、と。

わたしの中で、何かが切れた音がした。


「何かって……? 何かって何? ずっと付き合ってきた彼氏の熱愛報道とか?」


語気が強くなる。相手を詰るために言葉に針を仕込んでいる。気分が悪い。吐きそうだ。こんなこと、言っちゃいけないってわかってるのに。


「綺麗な女優さんと一緒に、彼氏が見覚えしかないマンションに帰っていく写真を見せられたよ。それは、有斗にとっては“何か”にはならないの?」

『っ、それは……!』

「不安どころじゃなかったよ。どうしようもなく怖かった」


吐き気がしてトイレに駆け込んだ時の光景を思い出す。

目の前が真っ暗になって、立っていられなかったあの瞬間が蘇る。


「それでも有斗を信じられたのは、有斗がくれた指輪があったからなのに。すぐ隣にいなくても大丈夫って思ってこられたのは、あの指輪のおかげだったのに」