だけど。
『指輪って……なんだ、そんなことか』
電話の向こうから聞こえたのは、安堵したような力の抜けた声。
そんなこと……。そんなことって言った……?
『急な電話だったし、声震えてたから何事かと思って焦った』
「だって……」
『指輪くらい、気にしないでいいから……泣くなよ。もう何年も前のだから古くなってただろうし、この際新しいの買おう』
鋭い槍で、心を貫かれたような気分だった。
『高校卒業する時に買ったやつだから、そんな良い物でもなかったしさ。今の美月には、もっといいブランドの指輪の方が似合うだろうし。いい機会だったんだよ』
今のわたし? もっといいブランド……?
いい機会って、何それ……?
「なんで、そんなこと言うの……?」
ぽつりと落ちた声は、自分でも驚くほどに低かった。
膝の上で拳を握り込む。飾り気のない左手。
スマホを耳に当てる右手も同様だなんて、思いたくないのに。
突然の喪失が、こんなにも寂しいのに。
「有斗は、仕事でいっぱい“もっといいブランド”に関わってるからそう思うのかもしれないけど! わたしにとっては、代えがきくものじゃないの!」
『指輪って……なんだ、そんなことか』
電話の向こうから聞こえたのは、安堵したような力の抜けた声。
そんなこと……。そんなことって言った……?
『急な電話だったし、声震えてたから何事かと思って焦った』
「だって……」
『指輪くらい、気にしないでいいから……泣くなよ。もう何年も前のだから古くなってただろうし、この際新しいの買おう』
鋭い槍で、心を貫かれたような気分だった。
『高校卒業する時に買ったやつだから、そんな良い物でもなかったしさ。今の美月には、もっといいブランドの指輪の方が似合うだろうし。いい機会だったんだよ』
今のわたし? もっといいブランド……?
いい機会って、何それ……?
「なんで、そんなこと言うの……?」
ぽつりと落ちた声は、自分でも驚くほどに低かった。
膝の上で拳を握り込む。飾り気のない左手。
スマホを耳に当てる右手も同様だなんて、思いたくないのに。
突然の喪失が、こんなにも寂しいのに。
「有斗は、仕事でいっぱい“もっといいブランド”に関わってるからそう思うのかもしれないけど! わたしにとっては、代えがきくものじゃないの!」



