「……っ」


弾かれたように顔を上げ、辺りを見回す。

床、ロッカーの隙間、棚の上。

雑然とした更衣室を一心不乱に探したけれど、見つからなかった。


「彼氏さんにもらった指輪なんだよね……?」

「……うん。すごく大事なものなの」


途中から探すのを手伝ってくれていた宮水の、気遣うような声が痛い。


どうしてないの? いつ失くなったの? どこに行ったの?

有斗の想いが詰まった、大切な指輪なのに……。


「一旦、落ち着こ。明日探せば、案外あっさり見つかるかもしれないよ」


宥めるような宮水の言葉に、わたしは力なく頷いた。

仕事の時以外は必ず身につけていた輝きの不在が、どうしようもなく悲しかった。




帰り道、有斗に連絡を入れた。

大切な指輪を失くしてしまったことを、黙ったままではいられないと思ったから。


[この後電話出来ない?]


忙しいかなと思っていたけれど、既読はすぐについた。


[22時くらいなら出来るよ。ちょっと遅くなるけどいいか?]


帰って、ご飯とお風呂を済ませたらちょうどいい時間になる。

スタンプで返事をすると、間髪入れずにスタンプが返ってきた。わたしが勧めた、クラゲのスタンプだった。




『もしもし、美月?』