想定外の話に、今度はわたしが目を瞬かせた。

別の人の家……?


「それって……」

「誰かはさすがに言えねーんだけど、ほら、あそこのマンション、他にも結構芸能人とか住んでるから」


その通りだ。

一等地で、セキュリティが万全で、外部からの人目につきにくい。

そんな物件は何十件とあるわけじゃないから、必然的に有名人同士が同じマンションになることもあるだろう。


「帰る段になって、自分ちに帰らずうちのマンションに行くって言うから、タクシーも一緒に乗ったんだ。エントランスまで一緒で、中で別れた」

「……そう、だったの」

「美月に黙って2人で食事したことも、深く考えずに同じタクシーに乗ったのも、全部軽率だった。本当にごめん」


真実を語る有斗の声は、嵐を鎮めるかのような柔らかさを内包していた。

どこにもささくれのないまっさらな声に、視界がじわりと滲む。


「連絡とれないの、不安だった……」

「ごめん。撮影中の映画での共演者だから、コメントとか各方面への対応とか余計にバタバタして……って、言い訳だよな。ごめんな」


有斗の指がそっとわたしの頬に触れ、涙を掬う。