「おかえり。来るって聞いてたのに寝ちゃってた」

「ただいま。美月がリビングでうたた寝なんて珍しいな」


時計を確認すると、どうやら1時間近く眠っていたらしい。

ここ最近疲れのとれない体を奮い立たせて、立ち上がる。


「大変だったね、撮影長引いて。お疲れさま」

「ありがと。まさかあんなに天候崩れるとはな」

「送ってくれた動画、すごかったね。春の嵐って感じ」

「東京の撮影は晴れてくれることを願うわ」


地方での撮影は、結局、当初の予定を2日延ばして終了したという。

今日東京に戻ってきた有斗は、約束通りすぐに会いに帰ってきてくれた。


「俊哉くん達、今日はいないんだっけ?」

「うん。土日で親戚のところ行ってる。明日の夜帰ってくるって」

「そっか。今日こっち泊まっていい?」

「うん、大丈夫だよ」


時刻は21時を回ったところだ。

手を洗いに洗面所に行った有斗を横目に、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。


「ねー、作り置きのでもいい? 寝ちゃって、何も出来てないの」

「何でもいいよ。ありがと」


働き始めてからというもの、ご飯はもっぱら作り置きだ。