すぐ近くに他の見物客がいないのをいいことに、ぎゃあぎゃあ騒ぐ一行。

と、その時、ポケットの中でスマホが震え始めた。

誰にも見えないようにポケットから取り出して確認すると、有斗の名前が表示されていた。

盛り上がる面々に断りを入れてから、少し離れた場所に移動して通話ボタンを押す。


「もしもし?」

『もしもし。今大丈夫?』

「うん、平気だよ。どうしたの?」


会える回数が少ない分、都合がつけばよく電話を繋いで実のない会話を交わすわたし達。

でもそれは予め約束してのことで、こんなふうに突発的にかかって来るときは、決まって何か用事がある。

案の定、今回もそうみたいで、電話口の向こうで有斗が言いづらそうに言葉を探す気配がした。


『明後日までの予定だった撮影、天気の関係で1日2日伸びそうでさ。帰ったらすぐ会う約束してたけど、まだ戻れそうにねーんだ。ごめん』


映画の撮影のため、今月中旬から家を留守にしている有斗。

地方での撮影が終われば、約1ヶ月ぶりに会えると予定を組んだけれど……仕方ない。こんなのは初めてじゃないし、こんなことに心を揺らしては有斗の彼女は務まらない。