とはいえ、先約があるという院長先生やお子さんがいる先輩は帰宅し、集まったのは都合がついた歳の近いメンツが計5人。


「おっ、いた〜。お待たせ〜」


先輩達と話をしているうちに、残りの2人がやってくる。

同い年の歯科衛生士で仲がいい宮水千穂|《ちほ》と、2歳年上の歯科医である大橋浩太(こうた)先生だ。

2人も靴を脱いでシートに上がる。わたしの隣には大橋先生が座った。


「いえーい。アキちゃんの隣ゲット〜」

「もう。調子のいいことばっかり言って」


お調子者の大橋先生にツッコミを入れた──ところで、思わず眉根をきゅっと寄せる。


「……先生、タバコの銘柄変えました?」

「えっ。変えてないけど、なんで?」


ゆるくパーマのかかった髪の向こうで、きょとんと目を丸くする先生。

わたしは鼻を摘みたくなるのを堪えつつ、答えた。


「いつもより残り香が強い気がして……。違ったんですね、すみません」

「えっ、嘘! ごめん!」


慌てた様子で自分の袖や首元を嗅ぐ先生と、そんな先生に顔を近づける先輩2人。