この一方で、ふと思う。理解しているのと本音は違うということを。

有斗の本心をわたしもわかっているし、わたしだって有斗の家に来るたびに帰りたくないと思っている。

わたし達の気持ちは、この右手の薬指に輝く指輪をもらった頃から少しも色褪せていないのだ。


「ね、有斗」

「ん?」

「ちゅーしてい?」


わずかに酔いが残る頭でイタズラに言うと、有斗が笑う気配がする。


「それだけで止められる自信ねーけど、それでもよければ」


わたしを抱きしめていた有斗の腕がふっと緩められる。

体を離すと、近い距離で視線が絡んだ。

選択を委ねるようでいて、決定権はわたしにないとその瞳の中に宿る眼光が語っている。──こんな顔を知るのは、世界中でわたしだけだ。


身を乗り出して有斗の薄い唇に口付ける。

昨晩とは違う、お酒の味がするキス。

ドラマや映画のキスシーンでは絶対にしないはずだから、わたしはちょっとだけ、アルコールを飲んだ後のキスが好き。


「俺さぁ、一生おまえのこと好きな自信あるわ」


くぐもった声がそう言ったかと思えば、今度は有斗からキスが落とされ、それはどんどん深くなっていく。

わたしもだよ、と返す間は与えてもらえなかった。