続・幼なじみの不器用な愛し方

わたしの言葉に、石田さんはそっと目を伏せながら口元に笑みを浮かべた。


「ここのオーナーは、やる予定もやる気もなかったんやけどな」


あぁ……あの顔だ。

石田さんが時折見せる、物憂げな表情。

痛みをぐっと堪えるような空気感が、尚更傷の深さを物語っているような。


何を言えばいいのかわからず押し黙ってしまったわたしを見て、石田さんが眉を下げた。


「なんで秋山さんが痛そうな顔するねん」

「……してません」

「してるよ。……ありがとうな」


ロールケーキにフォークが刺し入れられるのを、ぼんやりと眺める。

普段は内側に隠している部分がそっと開示される気配を、肌で感じていた。


「ここな、アパートもコワーキングスペースも……元々は俺の奥さんがやっててん」


ココアの入ったカップを、両手でぎゅっと包み込む。


「“さくら”って自分の名前からさくらんぼに繋げて、ドイツ語に変換して“キルシュ”。

酒やんって言うたけど、世の中お酒と結びつくような酒飲みばっかちゃうからええねんってさ」


慈しみに満ちた視線と声音。

聞き落としてしまわないよう、意識を全て集中させた。