続・幼なじみの不器用な愛し方

「……秋山さん?」


喉の奥から漏れた蚊の鳴くような声が聞こえたのか、扉の向こうから気遣わしげな声がかけられた。


「本、取りに来るの手間やろうからと思って持ってきたんやけど……大丈夫?」


耳に心地よく響く穏やかな低音に、わずかに引いていた波が再び押し寄せてくる。


情けない。

自分で選んだ道なのに、彼の証ひとつでこんなにも心を揺らしてしまうなんて。

知った人の声を聞いただけで、普通の顔を取り繕うことすら出来ないほど緩んでしまうなんて。


足に力が入らなくなって、扉に寄りかかって崩れ落ちる。


「……っ」


早く出なくちゃ。何か応えなくちゃ。

そう思うのに、湯水のように溢れる涙は止まることを知らずにわたしの頬を濡らし続ける。


「……俺な、今日しんどい用事済ませて来てん。無理にとは言わんけど、下で、ココアでも飲みながら聞いてくれたらありがたいんやけど」


石田さんの書くお話は、きっと優しい世界なんだろうと今なら思う。

わかりにくいけれど細やかで、感情の機微を見逃さない。