今から、1年くらい前。前に住んでいた部屋を引き払い新しい家を探すという有斗が、何気ない会話の中で同棲を持ちかけてきた。


付き合いの長い恋人同士で、次のステップとして同棲の話が持ち上がるのは不思議なことじゃない。

次に進みたいと思ってくれた有斗の気持ちは、本当に嬉しかった。

一緒に暮らせば、どれだけ多忙でも家で顔を合わせることができる。なんて魅力的なの、同棲生活。


ちょうどその頃、有斗は朝ドラの撮影で東京を離れることが多く、会える頻度がぐっと減っていた。

寂しさを抱えての日々だったので、有斗の気持ちはまるまるわたしの希望でもあった。

でも。


『もう少し、経ってからがいいな……』


有斗と一緒に住んだら、どれだけ幸せだろう。

生まれた時から一緒だから、ひとつ屋根の下に住むことに不安なんて1ミリもない。

そう思うのに、わたしの口は有斗の提案を拒んでいた。


『有斗と暮らしたくないわけじゃないんだよ。いつかはって、わたしも思ってる』

『……うん、わかってる。わかってるよ』