続・幼なじみの不器用な愛し方

すぐさま反応したのは、宮水ではなく大橋先生のほうだった。


「その大家さん、お酒好きなのかな」

「お酒?」

「うん。キルシュっていう、さくらんぼのお酒があるんだよ。どこかの言葉で、単純に“さくらんぼ”とも言うんだったかな」


手元のスマホで調べて、「ドイツ語みたいですね」と答えたのは宮水だ。


さくらんぼ。

丸みを帯びた可愛らしい果実と、わたしが知る石田さんはさっぱり結びつかない。

明海さん達とのお酒の席でも、もっぱら甘くないお酒ばかりを飲んでいると言っていた。


『忘れられへんよ』

そう言った横顔をふと思い出す。

ここから先は、超えてはならないラインの向こう側なんじゃないかと意識の外で思った。

互いに不可侵だから、わたし達はあの空間にいられるのだ。


「ていうか、大橋先生も宮水も、そのワードでお酒に繋げられるのすごくないですか? わたし全然知らなかった」

「わたしは、ついこの間飲んだんだよね。だから、何となく覚えてた」

「俺も、よく行くバーのカウンターに置いてるのを見たことある程度だよ。ただ、パッケージが可愛らしかったから覚えてた」

「それだけで覚えてるのが、2人とも凄いんだよなぁ」