続・幼なじみの不器用な愛し方

扉にかけてある札を裏返し、ガラス戸のロールカーテンを下ろしながら石田さんが問いかけてくる。


「ココアがいいです……」

「ん」


ここは飲み物の提供はしておらず、持ち込み式だ。

だけど、裏に小さい給湯室があって、わたし達はそこで飲み物を淹れられる。

カフェインレスコーヒーはわたしのために石田さんが買っておいてくれたものだ。


奥にある給湯室から出てきた石田さんが、2人分のコップを持って戻ってきた。

クーラーの冷気で冷やされた体に、温かいココアは嬉しい。


「すみません、お店閉めさせちゃって」

「いや。俺も作業行き詰まってたから、ちょうどよかった。今日はもう閉めて、家でだらける」


嘘ばっかり。

外から見た時、すごく真剣な表情でパソコンに向き合ってた。

行き詰まっているようには見えなかった。


ありがとうございます、と心の中で言う。

素直に受け取ってくれる人ではないことを、わたしはもう知っているから。


わたしがココアを啜る傍らで、石田さんは珍しく本を読んでいた。

革のブックカバーがかかっていてタイトルは見えないけれど、単行本のようだ。


「何読んでるんですか?」

「羽生田先生の新刊のプルーフ」

「プルーフ?」

「簡単に言うたら見本。読んで感想送ってくれって言われてて」