誰にでも優しくできる余裕はあるはずだった。 実際、今まではそうしてきた。 深入りしなければ、面倒な感情に振り回されることもない。 期待させず、期待もしない。 そうやって、一定の距離を保ってきた。 けれど長谷川のことになると、その線は簡単に越えてしまう。 気づけば視線で追っている。 雑用をしている背中、スコアを書いている指先、水を配りながら少しだけほっと笑う横顔。 声を聞けば安心して、少し笑ってくれるだけで胸が高鳴る。 そんな感情に振り回されている自分を、もう誤魔化せなかった。