──ダンボールを抱えて、危うく転びそうになった小さな背中。 練習前のあわただしい廊下。 誰も気づかないみたいに素通りしようとしたあの瞬間、気づいたら手が伸びていた。 頭に、ぽん、と触れた。 ほんの一瞬だったのに、触れた感触と、驚いて俺を見上げた彼女の表情が、やけに鮮明に蘇る。 (あんな顔、誰かに見せたことあったか?) 思い返すほどに、答えは「ない」とはっきりしていく。