〇豪邸前・夕方
うみ、口をあんぐり開け圧倒された表情。
「こ、ここが御曹司の家…」
正面に広がる近現代風の巨大な豪邸(※白壁・ガラス多用・3階建て)。背景に『豪邸』の2文字がでかでかと。
椿「今日からここがうみちゃんの家だよ」※ニコニコと
〇[回想]車内
うみ、求婚受諾直後。
椿、目と口をワァッと開け声にならない様子。
それから両手を広げうみに近寄る。
うみ(抱きしめられる!?)※慌てて
その瞬間、隆音が突然「ン゛ッンン!」と大声で咳払い。
椿、その咳払いでピタッと姿勢を正し、苦々しい顔で運転席に声をかける。
椿「隆音、夏風邪でも引いた? 空調上げたら?」
隆音「恐れ入ります」※全然恐れ入ってない声
椿、うみの方に居直り、うみの両手を取ってキラキラ瞳。
椿「俺のプロポーズ、受けてくれるの!?」
うみ「本当にすべてを与えてくれますか?」※真剣に
椿「うみちゃんが欲しい物、全部あげる」
うみ「じゃあ学費も…?」
椿「いくらでも出すよ」
うみ、向き直り深く頭下げる。
うみ「よろしくお願いします」
〇豪邸玄関
うみ、最低限の荷物(※小さいスーツケース)を持っており、隆音がうみの大量の参考書が入った段ボールを持つ。
厳重な電動の門をくぐり、広々とした白い石が敷いてある庭を抜けて家の中に入ると、広い玄関が広がる。
玄関には高級そうな調度品の数々。
螺旋階段あり。階段脇にはグランドピアノ(※ピアノ重要なので必ず描写してください)。
うみ(さすがマシログループ…)
椿「うみちゃん、こっち来て」※手を差し伸べながら
〇リビング
家の奥に入ると広いリビング(※L字ソファが置いてあり、キッチン・ダイニングが続く。大窓付き)。
うみ(なんか緊張してきたな…)(勢いで結婚するとか言ったけど大丈夫なんだろうか…)
椿「座って」
うみ、ソファ端に恐る恐る浅く腰掛ける。
椿「あはは、もっと深く座りなよ。自分ちになるんだよ」
うみ「そんな簡単に受け入れられませんよ…」
椿「なにか飲む?」
椿、立ち上がりオープンキッチンへ。
楽しそうにしてる椿をじっと見るうみ。
椿、ティーポットでお茶を淹れてうみの前に差し出す。
椿「どうぞ。カモミール。落ち着くから」
黄色いハーブティーが出てくる。
うみ、そっとカップを取り一口。
うみ「お花の味…おいしい…」
うみ(パニック続きだった心が落ち着いていく…)(椿さんなりに気遣ってチョイスしてくれたのかな…)
うみ、お茶を置く。
うみ「ところで、椿さんは、どうしてあたしがやばい状況って知ってたんですか?」
椿、穏やかな顔が一瞬ぴくっと固まるが、すぐに元のニコニコした顔に戻す。
椿「昨日の夜、たまたまうみちゃんの家の近く通ったら、お父さんが夜逃げしてるところを目撃したんだ」※お茶を飲みながら
うみ(たまたま?)
うみの脳内にデフォルメした糸花が「ストーカー」と言った姿で出てくる。
うみ(まさかね…)
部屋の隅にいる隆音がなんだか怖い表情をしている。
うみ「でもよくあたしの家を知ってましたね?」
椿、隆音を困ったような表情でチラ見。
椿(助けて…)
隆音「失礼ながら、麻子さまが亡くなられた折、うみさまがその後どうされているかお調べしたことがございました。その際に知ったのですよ。うみさまのことを椿さまはずっと気にされておりました」
うみ(なるほど…。じゃあストーカーってわけじゃないのか)※ホッとする
うみ、家をきょろきょろする。
うみ「そういえばご家族の方って…。挨拶とかも必要ですよね?」
椿、うみの言葉に穏やかな表情だが寂しげな目をする。
椿「母親は小さいときに亡くなってる。父親は俺が高校生のときからこんなでかい家置いてアメリカにいるよ。あとどこかに放浪した10歳上の兄が一人」
うみ(訳ありの家族か…。お母さん亡くなってるし。あたしと同じだ)
椿「挨拶とかはいいよ。親には俺から言っとくし」
「ところで」
にこっと笑う椿
椿「家の中案内してあげる」
椿の言葉に、思わずうみは手を上げてそれを拒否。
うみ「勉強したいから結構です」
椿「どこで勉強したらいいかも分からない状態で何言ってるの。おいで」
強引に言って、うみの手を引いて立ち上がる。
うみ「うわっ、ちょっと」
椿「今日からここがうみちゃんの家になるんだから」
〇ルームツアー
透けガラスの露天風呂やベランダのプール。
うみ「今まで住んでたボロアパートが幻みたい…。次元が違いすぎる!」※呆然と
椿の顔のアップ。
椿「じゃーん! ここがうみちゃんの部屋!」
そう言って案内したのは、とても広い部屋。大きめのソファに背の低いテーブルが配置され、巨大な窓からは海(※遠く)+夕陽が見える。
うみ「すごーい!」
うみ(…あれ?)
うみ、きょろきょろと部屋を見回す。
椿「どうしたの?」
うみ「あの」
椿「うん」
うみ「…ベッドはどこに…?」
うみが聞くと、椿がきょとんとする。
椿「うみちゃんは俺と一緒に寝るんだよ。さっきベッドルーム案内したでしょ?」
一瞬時が止まる。
うみ「はい!?!?」
ズザザザザと後ずさりするうみ。
うみ「絶対に嫌です!」
椿、うみにゆっくりと近づいて、うみの頬に触れる。
椿「安心して。手は出さないから」
椿の言葉にうみの顔は真っ赤。
うみ「は、はい!?」「そういう問題じゃないです!!」
うみ、気を取り直して。
うみ「椿さんっていくつですか?」
椿「俺? 23だけど」
うみ「18のあたしと寝るの、変だと思いませんか?」
椿「全く思わないけど。夫婦じゃん」
うみ「そっ、そうですけど!」「断固拒否です…」※声を絞り出して
椿がうみに顔を近づける。
椿「だめ。一緒に寝ること。これが結婚の条件」
そう言ってうみの頭にぽんと手を乗せる。
椿「わかった?」
うみ(結婚の…条件…)
うみが言葉に詰まる。
うみ「ううっ…」「わかり…ました」
うみ(結婚すると決めたときからとっくに覚悟は決めたはず)(女は度胸だ!)
〇うみの部屋・夜
ルームツアー終了。
うみと椿の名前が書かれた婚姻届。
椿「じゃあ俺はちょっと会社に戻るね。届出は隆音がしておいてくれるから」
うみ「わかりました」
椿は会社へ。うみが一人残される。
うみ「つ、疲れたああああ…」※よろよろと
机に座って参考書を広げながら→
うみ「でもようやく勉強できる…」
しかし、なぜか手が進まない。
うみ「…」「なんか頭に入ってこない…。やっぱ疲れてるのかな…」
机に突っ伏すうみ。
うみ「荷ほどきでもしようかな…」
立ち上がって荷ほどき開始。少ない荷物を開いて、棚やタンスに物を詰めていく。
最後にお母さんの遺影が出てくる。
うみが突っ立ったままそれをまじまじと見つめる。
ぽつ、と涙が写真に。
うみ「え…?」
うみの顔のアップ。涙がどんどん溢れる。
うみ(どうして…?)(お母さんが亡くなってからもう何年も経つ。今さら泣くなんてどうかしてる)
涙が止まらないうみ。
うみ(そっか…)
うみ(あたし、朝からずっと一人で戦ってたんだ…。父親に捨てられ、すべてを失ってそれでも気を張り続け、突然現れた知らない人と結婚を決めて)
うみ「お母さん…あたし、こんな世界で一人で生きてるよ」「戻ってきてよ。お母さんがいないと、あたしダメだよ…」
うみ、声を上げ泣き崩れる。
〇うみの部屋・夜
泣きつかれてソファで眠るうみ。
目覚めると部屋はすっかり暗い。
部屋の外からコンコンとノック。
椿「うみちゃん、ただいま」
「お腹空いてない? 一緒にごはん食べよう」
うみ「い、今行きます」※上ずった声で
椿「下で待ってるね」
うみ、頬をパンと叩く。
〇リビング
リビングに降りると良い匂いが広がる。
椿はソファで仕事の顔をしてタブレットとにらめっこ。
キッチンを覗くと豪華な料理が並んでいる。
うみ「すごいですね…! この食事、椿さんが用意してくれたんですか?」
椿「ううん、全部隆音が」
うみ「あの運転手さんが!? すごい…」
キッチンからダイニングテーブルに料理を運ぶうみ。
うみ「そういえばこの家ってこんなに広いのにお手伝いさんとかいないんですか?」
椿「いつも隆音が家のこと全般やってくれてるよ。食事は外で済ますことが多いし」
うみ「大忙しですね、隆音さん」
椿「あいつは会社では秘書的なこともやってくれてるし、俺の周りのことはだいたいあいつにお願いしてる。うみちゃんも何かあれば隆音に言ってね」
うみ(お手伝いさんは雇わないのかな…)
椿、うみの考えてることを読み取ったように。
椿「俺はね」「基本的に人のこと信用してないの。だから最低限しか家に入れない」
椿、タブレットを置いて立ち上がる。
椿「隆音とうみちゃんだけが特別なんだ」
うみ(特別…)※頬を紅潮させる
うみ(お母さんが亡くなってから父親にずっと蔑ろにされてきたからかな…)(その言葉がなんだかほの温かい)
うみの前まで来た椿。
椿「あれ?」
椿、首をひねる。
椿「うみちゃん…目、腫れてる」
そう言ってうみの頬に手を伸ばす。
ドキッとするうみ。
椿、親指で目元を撫でる。
椿「ひょっとして…泣いた?」
うみ「な、泣いてないです…」※顔逸らしながら
椿「嘘つき…」
椿、もう片手の手でうみの髪をそっと撫でる。
椿「うみちゃん…朝からずっと一人で気を張ってたんでしょ」
うみ「…っ」
椿「本当は心細かったよね」
「突然人生180°変わったんだもん、当たり前だよ」
椿はうみの髪を優しく撫で続ける。
うみの涙がポツリと流れ出る。
一度許すとぽろぽろと出てくる涙。
椿が軽くうみを抱き寄せ、背中をトントンと叩く。
椿「一人で戦ったよね。なんとか生きようと一人でもがいて…。俺のところに来ると決めてくれてありがとう」
うみの涙が椿の肩を濡らしていく。
椿「うみちゃん、俺がこれからうみちゃんのことを守るから。絶対に一人で戦わせない。うみちゃんにこの先なにがあっても一番に頼れる人になる」
椿が体を離し、うみの足元にひざまずく。
胸ポケットから小さい箱を出す。
椿「うみちゃん、改めて、俺と結婚してくれてありがとう。これ…受け取ってほしいんだ」
箱を開け、小さな指輪を出す。
椿「…いい?」※少し照れたように
うみ、涙目で自然にうなずく。
椿「良かった」※優しく笑う
椿、うみの左手を取り薬指にそっと指輪をはめる。
続けて、指輪にそっと口づける。
椿「誓いのキス」
うみ(なんだか…あたしは救われた気がした。何があってもこの先あたしにはこんな味方が側にいる。それが、今のあたしには嬉しかった)
椿、立ち上がり笑顔。
椿「ところで、結婚したからにはうみちゃんは俺のものって思ってもいいよね?」
うみ「はい…?」
椿「明日からは外出禁止だよ? 俺以外と会っちゃダメ」
うみ(もしかして…あたし、やばい人と結婚した?)
うみ、口をあんぐり開け圧倒された表情。
「こ、ここが御曹司の家…」
正面に広がる近現代風の巨大な豪邸(※白壁・ガラス多用・3階建て)。背景に『豪邸』の2文字がでかでかと。
椿「今日からここがうみちゃんの家だよ」※ニコニコと
〇[回想]車内
うみ、求婚受諾直後。
椿、目と口をワァッと開け声にならない様子。
それから両手を広げうみに近寄る。
うみ(抱きしめられる!?)※慌てて
その瞬間、隆音が突然「ン゛ッンン!」と大声で咳払い。
椿、その咳払いでピタッと姿勢を正し、苦々しい顔で運転席に声をかける。
椿「隆音、夏風邪でも引いた? 空調上げたら?」
隆音「恐れ入ります」※全然恐れ入ってない声
椿、うみの方に居直り、うみの両手を取ってキラキラ瞳。
椿「俺のプロポーズ、受けてくれるの!?」
うみ「本当にすべてを与えてくれますか?」※真剣に
椿「うみちゃんが欲しい物、全部あげる」
うみ「じゃあ学費も…?」
椿「いくらでも出すよ」
うみ、向き直り深く頭下げる。
うみ「よろしくお願いします」
〇豪邸玄関
うみ、最低限の荷物(※小さいスーツケース)を持っており、隆音がうみの大量の参考書が入った段ボールを持つ。
厳重な電動の門をくぐり、広々とした白い石が敷いてある庭を抜けて家の中に入ると、広い玄関が広がる。
玄関には高級そうな調度品の数々。
螺旋階段あり。階段脇にはグランドピアノ(※ピアノ重要なので必ず描写してください)。
うみ(さすがマシログループ…)
椿「うみちゃん、こっち来て」※手を差し伸べながら
〇リビング
家の奥に入ると広いリビング(※L字ソファが置いてあり、キッチン・ダイニングが続く。大窓付き)。
うみ(なんか緊張してきたな…)(勢いで結婚するとか言ったけど大丈夫なんだろうか…)
椿「座って」
うみ、ソファ端に恐る恐る浅く腰掛ける。
椿「あはは、もっと深く座りなよ。自分ちになるんだよ」
うみ「そんな簡単に受け入れられませんよ…」
椿「なにか飲む?」
椿、立ち上がりオープンキッチンへ。
楽しそうにしてる椿をじっと見るうみ。
椿、ティーポットでお茶を淹れてうみの前に差し出す。
椿「どうぞ。カモミール。落ち着くから」
黄色いハーブティーが出てくる。
うみ、そっとカップを取り一口。
うみ「お花の味…おいしい…」
うみ(パニック続きだった心が落ち着いていく…)(椿さんなりに気遣ってチョイスしてくれたのかな…)
うみ、お茶を置く。
うみ「ところで、椿さんは、どうしてあたしがやばい状況って知ってたんですか?」
椿、穏やかな顔が一瞬ぴくっと固まるが、すぐに元のニコニコした顔に戻す。
椿「昨日の夜、たまたまうみちゃんの家の近く通ったら、お父さんが夜逃げしてるところを目撃したんだ」※お茶を飲みながら
うみ(たまたま?)
うみの脳内にデフォルメした糸花が「ストーカー」と言った姿で出てくる。
うみ(まさかね…)
部屋の隅にいる隆音がなんだか怖い表情をしている。
うみ「でもよくあたしの家を知ってましたね?」
椿、隆音を困ったような表情でチラ見。
椿(助けて…)
隆音「失礼ながら、麻子さまが亡くなられた折、うみさまがその後どうされているかお調べしたことがございました。その際に知ったのですよ。うみさまのことを椿さまはずっと気にされておりました」
うみ(なるほど…。じゃあストーカーってわけじゃないのか)※ホッとする
うみ、家をきょろきょろする。
うみ「そういえばご家族の方って…。挨拶とかも必要ですよね?」
椿、うみの言葉に穏やかな表情だが寂しげな目をする。
椿「母親は小さいときに亡くなってる。父親は俺が高校生のときからこんなでかい家置いてアメリカにいるよ。あとどこかに放浪した10歳上の兄が一人」
うみ(訳ありの家族か…。お母さん亡くなってるし。あたしと同じだ)
椿「挨拶とかはいいよ。親には俺から言っとくし」
「ところで」
にこっと笑う椿
椿「家の中案内してあげる」
椿の言葉に、思わずうみは手を上げてそれを拒否。
うみ「勉強したいから結構です」
椿「どこで勉強したらいいかも分からない状態で何言ってるの。おいで」
強引に言って、うみの手を引いて立ち上がる。
うみ「うわっ、ちょっと」
椿「今日からここがうみちゃんの家になるんだから」
〇ルームツアー
透けガラスの露天風呂やベランダのプール。
うみ「今まで住んでたボロアパートが幻みたい…。次元が違いすぎる!」※呆然と
椿の顔のアップ。
椿「じゃーん! ここがうみちゃんの部屋!」
そう言って案内したのは、とても広い部屋。大きめのソファに背の低いテーブルが配置され、巨大な窓からは海(※遠く)+夕陽が見える。
うみ「すごーい!」
うみ(…あれ?)
うみ、きょろきょろと部屋を見回す。
椿「どうしたの?」
うみ「あの」
椿「うん」
うみ「…ベッドはどこに…?」
うみが聞くと、椿がきょとんとする。
椿「うみちゃんは俺と一緒に寝るんだよ。さっきベッドルーム案内したでしょ?」
一瞬時が止まる。
うみ「はい!?!?」
ズザザザザと後ずさりするうみ。
うみ「絶対に嫌です!」
椿、うみにゆっくりと近づいて、うみの頬に触れる。
椿「安心して。手は出さないから」
椿の言葉にうみの顔は真っ赤。
うみ「は、はい!?」「そういう問題じゃないです!!」
うみ、気を取り直して。
うみ「椿さんっていくつですか?」
椿「俺? 23だけど」
うみ「18のあたしと寝るの、変だと思いませんか?」
椿「全く思わないけど。夫婦じゃん」
うみ「そっ、そうですけど!」「断固拒否です…」※声を絞り出して
椿がうみに顔を近づける。
椿「だめ。一緒に寝ること。これが結婚の条件」
そう言ってうみの頭にぽんと手を乗せる。
椿「わかった?」
うみ(結婚の…条件…)
うみが言葉に詰まる。
うみ「ううっ…」「わかり…ました」
うみ(結婚すると決めたときからとっくに覚悟は決めたはず)(女は度胸だ!)
〇うみの部屋・夜
ルームツアー終了。
うみと椿の名前が書かれた婚姻届。
椿「じゃあ俺はちょっと会社に戻るね。届出は隆音がしておいてくれるから」
うみ「わかりました」
椿は会社へ。うみが一人残される。
うみ「つ、疲れたああああ…」※よろよろと
机に座って参考書を広げながら→
うみ「でもようやく勉強できる…」
しかし、なぜか手が進まない。
うみ「…」「なんか頭に入ってこない…。やっぱ疲れてるのかな…」
机に突っ伏すうみ。
うみ「荷ほどきでもしようかな…」
立ち上がって荷ほどき開始。少ない荷物を開いて、棚やタンスに物を詰めていく。
最後にお母さんの遺影が出てくる。
うみが突っ立ったままそれをまじまじと見つめる。
ぽつ、と涙が写真に。
うみ「え…?」
うみの顔のアップ。涙がどんどん溢れる。
うみ(どうして…?)(お母さんが亡くなってからもう何年も経つ。今さら泣くなんてどうかしてる)
涙が止まらないうみ。
うみ(そっか…)
うみ(あたし、朝からずっと一人で戦ってたんだ…。父親に捨てられ、すべてを失ってそれでも気を張り続け、突然現れた知らない人と結婚を決めて)
うみ「お母さん…あたし、こんな世界で一人で生きてるよ」「戻ってきてよ。お母さんがいないと、あたしダメだよ…」
うみ、声を上げ泣き崩れる。
〇うみの部屋・夜
泣きつかれてソファで眠るうみ。
目覚めると部屋はすっかり暗い。
部屋の外からコンコンとノック。
椿「うみちゃん、ただいま」
「お腹空いてない? 一緒にごはん食べよう」
うみ「い、今行きます」※上ずった声で
椿「下で待ってるね」
うみ、頬をパンと叩く。
〇リビング
リビングに降りると良い匂いが広がる。
椿はソファで仕事の顔をしてタブレットとにらめっこ。
キッチンを覗くと豪華な料理が並んでいる。
うみ「すごいですね…! この食事、椿さんが用意してくれたんですか?」
椿「ううん、全部隆音が」
うみ「あの運転手さんが!? すごい…」
キッチンからダイニングテーブルに料理を運ぶうみ。
うみ「そういえばこの家ってこんなに広いのにお手伝いさんとかいないんですか?」
椿「いつも隆音が家のこと全般やってくれてるよ。食事は外で済ますことが多いし」
うみ「大忙しですね、隆音さん」
椿「あいつは会社では秘書的なこともやってくれてるし、俺の周りのことはだいたいあいつにお願いしてる。うみちゃんも何かあれば隆音に言ってね」
うみ(お手伝いさんは雇わないのかな…)
椿、うみの考えてることを読み取ったように。
椿「俺はね」「基本的に人のこと信用してないの。だから最低限しか家に入れない」
椿、タブレットを置いて立ち上がる。
椿「隆音とうみちゃんだけが特別なんだ」
うみ(特別…)※頬を紅潮させる
うみ(お母さんが亡くなってから父親にずっと蔑ろにされてきたからかな…)(その言葉がなんだかほの温かい)
うみの前まで来た椿。
椿「あれ?」
椿、首をひねる。
椿「うみちゃん…目、腫れてる」
そう言ってうみの頬に手を伸ばす。
ドキッとするうみ。
椿、親指で目元を撫でる。
椿「ひょっとして…泣いた?」
うみ「な、泣いてないです…」※顔逸らしながら
椿「嘘つき…」
椿、もう片手の手でうみの髪をそっと撫でる。
椿「うみちゃん…朝からずっと一人で気を張ってたんでしょ」
うみ「…っ」
椿「本当は心細かったよね」
「突然人生180°変わったんだもん、当たり前だよ」
椿はうみの髪を優しく撫で続ける。
うみの涙がポツリと流れ出る。
一度許すとぽろぽろと出てくる涙。
椿が軽くうみを抱き寄せ、背中をトントンと叩く。
椿「一人で戦ったよね。なんとか生きようと一人でもがいて…。俺のところに来ると決めてくれてありがとう」
うみの涙が椿の肩を濡らしていく。
椿「うみちゃん、俺がこれからうみちゃんのことを守るから。絶対に一人で戦わせない。うみちゃんにこの先なにがあっても一番に頼れる人になる」
椿が体を離し、うみの足元にひざまずく。
胸ポケットから小さい箱を出す。
椿「うみちゃん、改めて、俺と結婚してくれてありがとう。これ…受け取ってほしいんだ」
箱を開け、小さな指輪を出す。
椿「…いい?」※少し照れたように
うみ、涙目で自然にうなずく。
椿「良かった」※優しく笑う
椿、うみの左手を取り薬指にそっと指輪をはめる。
続けて、指輪にそっと口づける。
椿「誓いのキス」
うみ(なんだか…あたしは救われた気がした。何があってもこの先あたしにはこんな味方が側にいる。それが、今のあたしには嬉しかった)
椿、立ち上がり笑顔。
椿「ところで、結婚したからにはうみちゃんは俺のものって思ってもいいよね?」
うみ「はい…?」
椿「明日からは外出禁止だよ? 俺以外と会っちゃダメ」
うみ(もしかして…あたし、やばい人と結婚した?)



