〇玄関・朝
うみ母のシルエット。
うみ(昔、お母さんに言われた)(『知らない人に着いて行ってはいけません』『知らない人が家に来ても家に上げてはいけません』)
花束を持った笑顔の椿。
うみ(今、あたしの家には知らないイケメン)
うみは軽くパニック状態。
うみ「お引き取り下さい!」
そう言って勢いよく扉を閉める。
扉の隙間、椿の驚いた顔が目に入る。
うみは玄関に背中を預け、ふーっと息を吐く。
うみ(パニックになって思わず扉を閉めてしまった…)
玄関の外から椿の遠慮がちな声。
椿「俺、うみちゃんの力になれればと思って来たんだ…」
うみ (あたしの力に?)(なに言ってるの、この人)※訳の分からない顔で
うみ、もう一度ドアをそーっと開ける。
椿の表情が「おっ!」と明るくなる。
無遠慮に部屋を覗き込む椿。
椿「うわ、すごいね、何もない部屋」
そのとき、ドア外でご近所さんがひそひそ噂。
それを見たうみ、咄嗟に椿の腕を引き部屋へ。ドアをバタン。
慌てて手を引いたのでその勢いで椿の顔がドアップ。
うみ「わわわ!」
うみ、椿の手を引いたまま後ずさりこけそう。椿が腰を取る。
椿「積極的だね?」※にこっ
うみ、顔を赤くし、慌てて距離を取る。
椿、壁にもたれ花束を片手に持ち。
椿「まあ立ち話もなんだから中に入れてよ」
うみ、体勢を立て直し不審な目。
うみ「…入れないですよ。そもそも誰なんですか、あなた」
椿「中に入れてくれれば教えるよ」
うみ、「うっ…」と詰まった顔。
うみ(しょ、正直誰かは気になるところ…)※汗かきながら
うみ(それに、あたしの力になるって…)
しばらく考えたうみは結論を出す。
うみ「…入っていいですよ」
椿、ぱぁっと顔輝く。「やった!」ひまわりのような笑顔。
うみ、イケメンの笑顔に見ごたえを感じつつ、部屋に案内。
うみ(お母さん、夢だからいいよね)
何もないリビングに立つ椿。
椿「お茶とか出してくれないの?」
笑顔のまま青筋を浮かべるうみ。
うみ(それより早く正体を明かせよ…)
うみ、夜食用のお煎餅をそっと渡す。
うみ「これで我慢してください…」
椿「ありがとう」※にっこり笑って
お煎餅の袋を片手に持ち、ポリポリ食べながらすぐ隣にあるうみの部屋を物色する椿。
椿「わ~、すごい数の参考書」
うみ「勝手に入らないでください!」
うみを無視し、壁に貼ってある『受験命』の書道を椿が見る。
椿「『受験命』だって。すごいね」
うみ「まあ、何よりも受験を優先して来ましたから…」
椿「えらいねえ」※しみじみ
うみ(ってそんなことより!)
うみ、机にバン!と手をつく。
うみ「あなたは一体誰なんですか!?」
椿「ああ!」手をポン。
椿「俺、麻城 椿と言います」
名刺を渡す。
名刺『マシロホールディングス 経営企画室 統括部長 麻城 椿』
うみ、まじまじ名刺を見る。
うみ「マシロホールディングスの…マシロさん?」
椿「いわゆる御曹司ってやつだね」※苦笑
うみ「マシロホールディングスの御曹司!?」
ハッとするうみ。体を反転させて考え込む。
うみ(待て待て、これは夢。)
椿をチラリと見る。
キラキラした椿の全身カット。
うみ(っていうことは、あたし、こういう王子様タイプに憧れでもあるってこと…?)
うみはやや困惑気味。
うみ(恋愛なんて興味ないし、あたしは王子様を待つより自分で夢をつかみ取るタイプなんだけど…。)
椿の方向に体を戻して、
うみ「で、麻城さんは…」
椿「椿って呼んで?」※笑顔
うみ「…椿さんは、何をしにうちに?」※引きつり
椿「だから、俺と結婚してもらおうと思って」※笑顔のまま
うみ「はい…?」
大量に汗をかいたうみのデフォルメ絵。
うみ(夢だとしてもついていけないんですが…)
うみ「そもそも、なんであたしのことを知ってるんですか?」「いや、これはあたしの夢だから知っててもおかしくはないんですけど…」
うみの言葉にきょとんとする椿。
椿「アハハ!」
笑ったかと思いきや、うみのほっぺをおもむろにうにょーんと引っ張る。
うみ「いたっ…! 何やってんれすか!」
椿「あはは、痛いでしょ」
うみ「痛いですよ!」
怒るうみ。
椿「痛いってことは? 本当に夢かな?」
うみ(あっ…)
引きつった笑いを浮かべながら、よろよろとうみが後退する。
うみ「いやいや…」
椿を指さす。
うみ「…うそだ!」
椿「うそだと思いたいならそうしてもいいけど、現実は変わらないよ」
恨みのこもった目で椿を見るうみ。
うみ(なんでそんなにのほほんとしてるの…)
椿「それで、見た通りうみちゃんは何も持ってなさそうだけど、俺と結婚する気はない? そうしたら全部手に入るよ。俺が全部与えてあげる」
うみ「そんなの…知らない人に急に言われて受け入れられるわけ…」
視線を伏せたうみは、椿の時計に目が留まる。
うみ「あーっ!」
思わず椿の腕を取る。
うみ「学校! 遅刻する!」
椿「そんなこと言ってる場合?」
椿、呆れながらも「車で送ってくよ」
うみ、困ったように目を閉じて、唇を噛みしばし「~…」考える。
うみ「あーもう! お願いします!」
〇アパート前
黒塗り高級車がアパート前に止まっている。
強面の運転手・隆音(※黒服姿)が恭しく2人に頭を下げ、後部座席をそっと開く。
椿、手で指し示してうみを案内。
椿「入って」
乗るところのへりの部分を手で抑えて頭がぶつからないようにしてくれる椿。
うみが後部座席に座ると、その隣に椿も座る。
運転席に戻った隆音に、うみ「青葉高校までお願いします」
うみ(って、タクシーか!)とセルフツッコミ。
椿「うみちゃん、それでね…」
うみに話しかける椿だが、うみはそれを聞いていない様子でそわそわ。
椿「どうしたの?」
うみ「勉強してもいいですか?」
言いながら英単語帳を出す。
椿「…なんで?」
笑顔のまま戸惑った様子の椿。
うみ「本当は今朝早起きしてする予定だったのに出来なかったから…。毎日15時間勉強するようにしてるんです」
椿「たくましいね、うみちゃんは」 ※穏やかな顔
〇学校到着・青葉高校前
車停車。
隆音「着きました」
うみ「ありがとうございます」
単語帳しまう。
隆音が後部座席のドアを開け、うみが車を降りようとする。
椿「帰りもここで待ってるから。今後のことはあとで話そう」
椿の言葉にうみは曖昧に笑って降車する。
隆音「いってらっしゃいませ」※礼しながら
うみ、隆音に礼を返し校門へ。
うみ(今後のことって言われても…)
うみ、ふと(そういえば、運転手さんはナビも見ずにここまで来たな…)
〇椿と隆音、2人だけの車内
隆音「だいぶ急展開だったんじゃないですか?」
椿「隆音。その敬語やめてよって何度言ったらわかるの? 友達でしょ」※頬膨らませて
隆音「失礼。あなたがあまりにも気持ち悪い感情をうみさまに向けてるので、まさかそんな男が自分の友だと信じたくなくて」
椿「ひどい言い草」
隆音「まあうみさまにその気色悪いところを露呈しなかっただけ頑張ったとは思いますけどね」
椿「だって気持ち悪がられないように努力しろって隆音が言うから…」
隆音「当たり前です」憮然と言って「はあ…」とため息をつく。
椿「にしても、あのダメ親父が夜逃げするところを目撃したのはファインプレーだったね」
〇[回想]夜・車内・うみのアパートの前
隆音「いい加減、朝晩うみさまの学校や家の周辺を車でうろつくのはやめたらいかがですか」
椿「いいじゃん。少しでも近くに感じたいの」
「…ん?」
アパートの前の人影を見て何かに気づく椿。
うみの継父とその彼女がアパートから荷物を運び出して夜逃げしているところだった。
椿「…あれってあのダメ親父だよね?」
隆音「ですね…」
椿「…ふーん?」
椿アオリ。怪しい笑顔。
〇[回想終わり]車内
椿「俺の日課がピンチに気づけたわけだ」
隆音「あなたのそれは日課ではなくストーキングと言うんです」
隆音が車を急発進させる。椿が前の座席におでこをぶつける。
椿「…運転手のくせにずいぶんと乱暴だね」※苦々しく
椿が流れる景色を見つめる。
椿「早く俺のものになってよ、うみ」
隆音、大きくため息。
うみ母のシルエット。
うみ(昔、お母さんに言われた)(『知らない人に着いて行ってはいけません』『知らない人が家に来ても家に上げてはいけません』)
花束を持った笑顔の椿。
うみ(今、あたしの家には知らないイケメン)
うみは軽くパニック状態。
うみ「お引き取り下さい!」
そう言って勢いよく扉を閉める。
扉の隙間、椿の驚いた顔が目に入る。
うみは玄関に背中を預け、ふーっと息を吐く。
うみ(パニックになって思わず扉を閉めてしまった…)
玄関の外から椿の遠慮がちな声。
椿「俺、うみちゃんの力になれればと思って来たんだ…」
うみ (あたしの力に?)(なに言ってるの、この人)※訳の分からない顔で
うみ、もう一度ドアをそーっと開ける。
椿の表情が「おっ!」と明るくなる。
無遠慮に部屋を覗き込む椿。
椿「うわ、すごいね、何もない部屋」
そのとき、ドア外でご近所さんがひそひそ噂。
それを見たうみ、咄嗟に椿の腕を引き部屋へ。ドアをバタン。
慌てて手を引いたのでその勢いで椿の顔がドアップ。
うみ「わわわ!」
うみ、椿の手を引いたまま後ずさりこけそう。椿が腰を取る。
椿「積極的だね?」※にこっ
うみ、顔を赤くし、慌てて距離を取る。
椿、壁にもたれ花束を片手に持ち。
椿「まあ立ち話もなんだから中に入れてよ」
うみ、体勢を立て直し不審な目。
うみ「…入れないですよ。そもそも誰なんですか、あなた」
椿「中に入れてくれれば教えるよ」
うみ、「うっ…」と詰まった顔。
うみ(しょ、正直誰かは気になるところ…)※汗かきながら
うみ(それに、あたしの力になるって…)
しばらく考えたうみは結論を出す。
うみ「…入っていいですよ」
椿、ぱぁっと顔輝く。「やった!」ひまわりのような笑顔。
うみ、イケメンの笑顔に見ごたえを感じつつ、部屋に案内。
うみ(お母さん、夢だからいいよね)
何もないリビングに立つ椿。
椿「お茶とか出してくれないの?」
笑顔のまま青筋を浮かべるうみ。
うみ(それより早く正体を明かせよ…)
うみ、夜食用のお煎餅をそっと渡す。
うみ「これで我慢してください…」
椿「ありがとう」※にっこり笑って
お煎餅の袋を片手に持ち、ポリポリ食べながらすぐ隣にあるうみの部屋を物色する椿。
椿「わ~、すごい数の参考書」
うみ「勝手に入らないでください!」
うみを無視し、壁に貼ってある『受験命』の書道を椿が見る。
椿「『受験命』だって。すごいね」
うみ「まあ、何よりも受験を優先して来ましたから…」
椿「えらいねえ」※しみじみ
うみ(ってそんなことより!)
うみ、机にバン!と手をつく。
うみ「あなたは一体誰なんですか!?」
椿「ああ!」手をポン。
椿「俺、麻城 椿と言います」
名刺を渡す。
名刺『マシロホールディングス 経営企画室 統括部長 麻城 椿』
うみ、まじまじ名刺を見る。
うみ「マシロホールディングスの…マシロさん?」
椿「いわゆる御曹司ってやつだね」※苦笑
うみ「マシロホールディングスの御曹司!?」
ハッとするうみ。体を反転させて考え込む。
うみ(待て待て、これは夢。)
椿をチラリと見る。
キラキラした椿の全身カット。
うみ(っていうことは、あたし、こういう王子様タイプに憧れでもあるってこと…?)
うみはやや困惑気味。
うみ(恋愛なんて興味ないし、あたしは王子様を待つより自分で夢をつかみ取るタイプなんだけど…。)
椿の方向に体を戻して、
うみ「で、麻城さんは…」
椿「椿って呼んで?」※笑顔
うみ「…椿さんは、何をしにうちに?」※引きつり
椿「だから、俺と結婚してもらおうと思って」※笑顔のまま
うみ「はい…?」
大量に汗をかいたうみのデフォルメ絵。
うみ(夢だとしてもついていけないんですが…)
うみ「そもそも、なんであたしのことを知ってるんですか?」「いや、これはあたしの夢だから知っててもおかしくはないんですけど…」
うみの言葉にきょとんとする椿。
椿「アハハ!」
笑ったかと思いきや、うみのほっぺをおもむろにうにょーんと引っ張る。
うみ「いたっ…! 何やってんれすか!」
椿「あはは、痛いでしょ」
うみ「痛いですよ!」
怒るうみ。
椿「痛いってことは? 本当に夢かな?」
うみ(あっ…)
引きつった笑いを浮かべながら、よろよろとうみが後退する。
うみ「いやいや…」
椿を指さす。
うみ「…うそだ!」
椿「うそだと思いたいならそうしてもいいけど、現実は変わらないよ」
恨みのこもった目で椿を見るうみ。
うみ(なんでそんなにのほほんとしてるの…)
椿「それで、見た通りうみちゃんは何も持ってなさそうだけど、俺と結婚する気はない? そうしたら全部手に入るよ。俺が全部与えてあげる」
うみ「そんなの…知らない人に急に言われて受け入れられるわけ…」
視線を伏せたうみは、椿の時計に目が留まる。
うみ「あーっ!」
思わず椿の腕を取る。
うみ「学校! 遅刻する!」
椿「そんなこと言ってる場合?」
椿、呆れながらも「車で送ってくよ」
うみ、困ったように目を閉じて、唇を噛みしばし「~…」考える。
うみ「あーもう! お願いします!」
〇アパート前
黒塗り高級車がアパート前に止まっている。
強面の運転手・隆音(※黒服姿)が恭しく2人に頭を下げ、後部座席をそっと開く。
椿、手で指し示してうみを案内。
椿「入って」
乗るところのへりの部分を手で抑えて頭がぶつからないようにしてくれる椿。
うみが後部座席に座ると、その隣に椿も座る。
運転席に戻った隆音に、うみ「青葉高校までお願いします」
うみ(って、タクシーか!)とセルフツッコミ。
椿「うみちゃん、それでね…」
うみに話しかける椿だが、うみはそれを聞いていない様子でそわそわ。
椿「どうしたの?」
うみ「勉強してもいいですか?」
言いながら英単語帳を出す。
椿「…なんで?」
笑顔のまま戸惑った様子の椿。
うみ「本当は今朝早起きしてする予定だったのに出来なかったから…。毎日15時間勉強するようにしてるんです」
椿「たくましいね、うみちゃんは」 ※穏やかな顔
〇学校到着・青葉高校前
車停車。
隆音「着きました」
うみ「ありがとうございます」
単語帳しまう。
隆音が後部座席のドアを開け、うみが車を降りようとする。
椿「帰りもここで待ってるから。今後のことはあとで話そう」
椿の言葉にうみは曖昧に笑って降車する。
隆音「いってらっしゃいませ」※礼しながら
うみ、隆音に礼を返し校門へ。
うみ(今後のことって言われても…)
うみ、ふと(そういえば、運転手さんはナビも見ずにここまで来たな…)
〇椿と隆音、2人だけの車内
隆音「だいぶ急展開だったんじゃないですか?」
椿「隆音。その敬語やめてよって何度言ったらわかるの? 友達でしょ」※頬膨らませて
隆音「失礼。あなたがあまりにも気持ち悪い感情をうみさまに向けてるので、まさかそんな男が自分の友だと信じたくなくて」
椿「ひどい言い草」
隆音「まあうみさまにその気色悪いところを露呈しなかっただけ頑張ったとは思いますけどね」
椿「だって気持ち悪がられないように努力しろって隆音が言うから…」
隆音「当たり前です」憮然と言って「はあ…」とため息をつく。
椿「にしても、あのダメ親父が夜逃げするところを目撃したのはファインプレーだったね」
〇[回想]夜・車内・うみのアパートの前
隆音「いい加減、朝晩うみさまの学校や家の周辺を車でうろつくのはやめたらいかがですか」
椿「いいじゃん。少しでも近くに感じたいの」
「…ん?」
アパートの前の人影を見て何かに気づく椿。
うみの継父とその彼女がアパートから荷物を運び出して夜逃げしているところだった。
椿「…あれってあのダメ親父だよね?」
隆音「ですね…」
椿「…ふーん?」
椿アオリ。怪しい笑顔。
〇[回想終わり]車内
椿「俺の日課がピンチに気づけたわけだ」
隆音「あなたのそれは日課ではなくストーキングと言うんです」
隆音が車を急発進させる。椿が前の座席におでこをぶつける。
椿「…運転手のくせにずいぶんと乱暴だね」※苦々しく
椿が流れる景色を見つめる。
椿「早く俺のものになってよ、うみ」
隆音、大きくため息。



