魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

『ゼラ!! 』

 母親の必死な声にハッと気づき集落に意識を戻すと、ゼラは巻角の男に囲われどこかへ連れて行かれる所だった。

『母さん!! 』

『大丈夫ですよ、娘さんはしっかりとお医者様に診てもらいますから。しっかりと、ね……』

『ゼラ〜!! 』

 追いかけようとした母親は一人の巻角の男に取り押さえられ、そのまま泣き崩れた。

『貴族様……どうして!? 』

 彼は愕然とした。
 あの男たちの様子はどう見ても手慣れており、一度や二度ではない様子。

 低魔族など似たようなものと思い込んで高をくくっていた為、別魔族同士でのあのような事を間近で見たのは初めてだった。

「おのれ……!! 我が世界でこれ以上好きにさせるわけにはいかない! 」

 彼は少数の兵を呼び集め、娘を拐った者たちの行方と、小角族の集落の情報収集と見張りを命じる。

「決して、低魔族の者たちを怯えさせることの無いよう! 」

「王子の命により、村の見張りに出掛ける! 我に続け! 」

 副隊長の掛け声とともに兵たちは城を飛び立った。


 その頃娘は一角獣の牽く男たちの車に乗せられ、巻角族の住む街に向かっていた。

「貴族様、どこまで行くんですかぁ??」

「お医者様に会う準備をするんですよ。しっかりと身支度を整えなくては……」

 男はそう言うと仲間に尋ねた。

「おい、高魔族のお偉方に声は掛けたか?抜かるなよ?」

「??」