魔族の王子の進む道 〜俺様王子が魔王になるまで〜

「ゼラは元気だな! 」

「おっちゃん、あたしは今日も元気だよ〜」

「良かったねぇ、ゼラ! 」
「ゼラ、良カッタ!! 」

 城に連れて行かれ、森で倒れたことなど何のその。娘は集落の者たちと笑い合い、楽しげに食事を囲んでいる。

「少々抜けた所はありますが、ゼラはこの村の自慢なのです。本当にありがとうございます……! 」


 小角族は農産が盛んだった為、野菜たっぷりの素朴な料理が並んだ宴。

 彼は念の為の毒味を、こっそり自らの出した霧にさせ、しばらく顔に出さぬまま渋っていた。
 しかし空腹ではあった為、そっと食器を浄化し、娘が真っ先に持ってきた料理にようやく手を出す。

「……悪くない」

 城では料理に細かく注文をつけ、誰かと共にすることも無く、幼い頃からたった一人で食事をしていた。
 弟は『兄上の邪魔をしないように…』と言い、いつの間にか城の下々の者たちと食事をするようになっていたからだ。

 純粋に出された物を周りの者達と食べることをしてこなかった為、新鮮だったのかもしれない。

「そう言っていただけると、兵士様に宴を開いた甲斐がございます!! さあ、こちらも少しずつ召し上がってみてください」