どのくらいたったか、魔力を蓄え込んだ黒や濃い緑の草木の間に見え隠れする、小さな赤褐色が目に入った。

「お前……!! 」

 ぐったりと身体を横たえ、気を失った傷だらけの娘。
 彼は迷わず抱き上げ立ち上がった。

 まだ帰りがある。
 ここで体力も魔力も消耗するわけにはいかない。一刻の猶予も無かった。

 彼は自らの発してきた魔力を辿り、娘を抱えたまますぐさま森の外へ向かった。


 魔力に守られていたとはいえ、それでも防具は傷だらけ。彼も疲れ果て、森の外へ出た途端に膝を付いた。

 次は娘を集落まで届けなければならない。
 魔力は森から出てすぐ徐々に回復しているが、体力は彼女を抱き抱えたまま飛ぶほどまでは至っていない。

 彼はそのまま地面に座り込んだ。

「……こんな、娘の為に!! 」

 自分の足で歩く体力など自身の強魔力でカバーしただけであり、すでに有るはずもない。

 彼は兵士姿で娘を抱き抱えたまま、森の外で眠ってしまった。